研究課題
炎症性サイトカインinterleukin (IL)-1βは、結核菌に対する感染防御に重要であり、IL-17A産生の誘導因子でもある。一方、結核菌が分泌するZinc metalloprotease (Zmp)1はIL-1βの産生を抑制する病原因子である。Zmp1遺伝子欠損Mycobacterium tuberculosis var. BCG株(ΔZmp1-BCG)が強い抗結核免疫応答を誘導する可能性が考えられたため、マウスin vivo感染系を用いて検証した。C57BL/6マウスに野生型(WT)またはΔZmp1-BCGを接種し、8週後に結核菌を経気道感染させた。対照群として、BCG非接種群をおいた。結核菌感染4週後に解析を行ったところ、感染肺への好中球とマクロファージの浸潤はWT-、ΔZmp1-BCG接種群間に顕著な差は認められなかった。しかし、両群共に対照群と比較して炎症性細胞は有意に低く、組織病理学的解析もそれを反映した。感染肺でのIL-17Aの遺伝子発現は、ΔZmp1-BCG接種群でWT-BCG接種群に比べ、その発現が高かった。一方、感染肺中のIL-17A産生TCR γδ+ T (γδT17)細胞は、対照群ならびにWT-BCG接種群に比べ、ΔZmp1-BCG接種群で有意な増加が認められた。感染肺におけるWT-およびΔZmp1-BCG接種両群の菌数は対照群に比べ減少傾向が認められ、脾臓内菌数はΔZmp1-BCG接種群で有意に減少した。ΔZmp1-BCG接種マウスの肺ではγδT17細胞によるIL-17A産生が高く、結核菌の他臓器への播種が抑えられたことから、その接種の結核予防効果が期待された。現在、ΔZmp1-BCGのIL-17A産生増強作用を推定し、従来の抗結核BCGワクチン株で全身免疫を誘導した状況でのΔZmp1-BCG追加接種の宿主への影響を検証している。
2: おおむね順調に進展している
ΔZmp1-BCG接種マウスの肺ではγδT17細胞によるIL-17A産生が高く、結核菌の他臓器への播種が抑えられたことから、その接種の結核予防効果が期待され、ほぼ計画どおりである。
予備実験として抗結核ワクチンBCG株を接種した後にΔZmp1-BCGを追加接種したところ、肺炎の急性増悪様の病態が観察された。今後、Zmp-1遺伝子欠損BCG(ΔZmp1-BCG)のIL-17A産生増強作用を推定し、従来のBCGワクチンで全身免疫を誘導した状況でのΔZmp1-BCG追加接種の宿主への影響を検証する予定であるが、過剰な炎症を発症させない適度な追加接種のプロトコールを検討しなくてはならない状況である。
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、関連研究のための出張がすべてキャンセルになったこと、動物の飼育状況を改善したことから、予定していた予算の消化を次年度以降に移行させた。動物実験を再開すると、消耗品(研究用試薬等)の購入が増すものと予想される。また、共同研究(依頼)の打ち合わせのための出張が増えると思われる。
当分野のホームページは「分子感染防御学分野」で、URLは「https://tbc.skr.u-ryukyu.ac.jp/感染免疫制御学分野/」。
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FASEB Journal
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