研究課題/領域番号 |
21K07028
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90359985)
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研究分担者 |
高江洲 義一 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (60403995)
松崎 吾朗 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (30229455)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | interleukine-17A / interleukine-1β / Zinc metalloprotease / TCR γδ T細胞 / BCG / 結核 / 肺 |
研究実績の概要 |
結核菌の排除にはIFN-γを産生するTh1細胞が重要だが、結核菌はその誘導を遅延させる。この現象は結核ワクチン株であるBCGを接種しても回避できない。そこから、結核制圧にはIFN-γ以外のエフェクター分子が必要と考えられ、炎症性サイトカインIL-17Aが候補の一つに挙げられる。一方、IL-17A産生誘導因子のIL-1βの産生は結核菌の分泌蛋白であるZmp-1により抑制される。そこで、Zmp-1遺伝子欠損BCG (ΔZmp1-BCG)のIL-17A産生増強作用を推定し、野生型(WT) BCGで全身免疫を誘導した状況でのΔZmp1-BCG追加接種のIL-17A誘導と宿主への影響を検証した。 C57BL/6Jマウスの背部皮内に5x106 cfuのWT-BCGを接種し、8週後に5x10e6 cfuのWT-BCGあるいはΔZmp1-BCGを経気道接種した。対照群として、追加BCG非接種群をおいた。その後、宿主への影響を経過観察するとともに、追加接種3日目の肺を採取し、炎症性サイトカインの発現とその産生細胞をELISA、real-time PCR、フローサイトメトリ (FCM)を用いて比較した。その結果、WT-BCG接種後にΔZmp1-BCGを追加接種した群のみ生存率が低下した。肺の炎症性サイトカインの解析では、ΔZmp1-BCGを追加接種した群でIL-1βとIFN-γの産生が高い傾向が認められ、細胞内サイトカインFCM解析の結果、IL-17A産生細胞 (特にTCRγδ+ T細胞)が高頻度に検出された。 以上の結果から、WT-BCGの初回接種したことにより全身性のTh1免疫応答が誘導され、そこにΔZmp1-BCGを追加接種したことによってIL-1βが強く産生誘導された結果、IL-17Aが過剰に産生され、好中球を含む炎症性細胞の浸潤を伴った肺炎の急性増悪を誘導したと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-17A産生誘導因子のIL-1βの産生は結核菌の分泌蛋白であるZmp-1により抑制される。そこで、Zmp1欠損(ΔZmp1)BCGのIL-17A産生増強作用を推定し、野生型(WT) BCGで全身免疫を誘導した状況でのΔZmp1-BCG追加接種のIL-17A誘導と宿主への影響を検証した。予想として、従来の全身性抗結核免疫を更に増強されると推定していたが、結果は、ΔZmp1-BCGを追加接種したことによってIL-1βが強く産生誘導された結果、炎症性サイトカインであるIL-17Aが過剰に産生され、過剰なIFN-γ産生T細胞や好中球を含む炎症性細胞の浸潤を伴った肺炎の急性増悪を誘導した。予想外の結果になったことから、免疫増強誘導の最適化を検討することになった。
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今後の研究の推進方策 |
過剰なIFN-γ産生T細胞や好中球を含む炎症性細胞の浸潤を伴った肺炎の急性増悪を誘導してしまったことから、過剰炎症を発症させない追加接種プロトコールを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の蔓延により国内外の出張を控えたこと、また急激な物品輸送の高騰により本研究課題に重要な実験動物に関わる消耗品の導入を抑えたことにより、次年度以降の研究推進のために利用することにした。令和5年度には上記の状況が改善されるものと期待し、滞っている実験動物を用いた研究に対する費用に充てる予定である。また、次年度は研究期間の最終年度になるため、研究成果を報告、発表するための費用に充てたいとも考えている。
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備考 |
当分野のホームページは「分子感染防御学分野」で、URLは「https://tbc.skr.u-ryukyu.ac.jp/分子感染防御学分野/」である。
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