真菌の薬剤耐性を抑制する薬の開発のためには、まず、真菌の薬剤耐性機構を解明することが重要である。本研究は、小胞体ストレスに着目することで、小胞体の異常と薬剤排出ポンプPDR5高発現による薬剤耐性化の関係について検証することを目的とした。薬剤耐性を亢進させるモデル抗真菌薬のドデカノールを用いて、出芽酵母における小胞体ストレスと薬剤排出ポンプPDR5高発現の関係について検証した。まず、GFP標識・小胞体ストレス応答タンパク質GFP-Ire1p発現株を用いて、Ire1pの小胞体膜への集合を評価し、ドデカノール処理時に小胞体ストレスが誘導されるのかを検証した。その結果、ドデカノール処理によってIre1pが小胞体膜へ集合し、小胞体ストレス応答が誘導されることが分かった。また、IRE1欠損株に対するドデカノールの抗真菌作用を検証した結果、親株に比べてIRE1欠損株は生菌数の回復が加速化された。さらに、IRE1欠損株のPDR5発現量をリアルタイムPCR法にて、薬剤排出活性をローダミン6Gを用いる蛍光法にて調べた。その結果、IRE1欠損株ではPDR5の転写量が増加し、加えてポンプの排出活性も高いことがわかった。最後にIRE欠損株においてPdr5pの発現が上昇しているかどうかをGFP-Pdr5pを用いて確認したところ、遺伝子発現レベルの上昇に遅れて、タンパク発現レベルが上昇していることがわかった。 以上より、出芽酵母において、ドデカノールによって小胞体ストレスが誘導され、応答反応が誘導されることが示唆された。また、IRE1欠損株は、薬剤排出活性が増大することで、親株と比べて、ドデカノール処理による生育抑制からの回復が早いことが示唆された。
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