昨年度までの研究より、サルモネラの脂肪酸代謝が腸管内定着に関与することを明らかにし、脂肪酸代謝による第二相鞭毛の発現とそれに依存した鞭毛運動の変化を示した。今年度では、その鞭毛運動の変化がサルモネラの腸管内定着性におよぼす影響を明らかにすることを試みた。その結果、脂肪酸代謝が機能不全であるサルモネラ変異株における腸管内定着能の減弱は第二相鞭毛の発現量の低下が原因であることを突き止めた。また、脂肪酸代謝の阻害剤はサルモネラの第二相鞭毛の発現量を有意に減少させた。まとめると、腸管内におけるサルモネラの脂肪酸恒常性は第二相鞭毛遺伝子の発現を活性化し、その結果、鞭毛に依存した直線的な運動が活発になる。重要なことに、この運動の質的変化は腸管内での定着を活性化する。本研究により、脂肪酸代謝と恒常性に依存したサルモネラの腸管内定着戦略を明らかにし、本戦略がサルモネラの腸感染を制御する新たなターゲットになる可能性を示唆した。
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