2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、今や世界各地に蔓延し、2023年4月現在で6億7千万人を超え、およそ682万人が亡くなっている。その対策についてはワクチンと治療薬が重要であるが、現在は世界各地で新規抗ウイルス薬の開発が進められている。 本研究では、新型コロナウイルスに対し、効果が期待される抗ウイルス薬について、薬剤耐性ウイルスの検出を試み、最終的には確実な治療法の確立を目指す。 今年度は、ヒト気道上皮に存在するセリンプロテアーゼ発現細胞であるVeroE6/TMPRSS2細胞を用いて、日本で開発されたS-217622について、薬剤存在下で継代を行い、耐性の検出を試み、3種類の変異ウイルスを検出した。また、PF-00835231耐性と示される変異ウイルスを人工合成により作出した。それら変異ウイルスについて、培養細胞における増殖力の違いを確認した。その結果、一部の変異株については、細胞での増殖能が低下していることが明らかとなった。薬剤感受性については、野生株に比較し、低下しているものがあった。 さらに、両薬剤耐性ウイルスについて、それぞれ、ハムスターモデルを用い、体重変化、肺、鼻甲介におけるウイルス量の観察を行い、病原性の比較を行った。その結果、一部の耐性株は増殖力が若干低下していることが判明した。 以上のことから、新型コロナウイルスについても薬剤耐性ウイルスが出現し、耐性ウイルスの蔓延等の問題が危惧されることが示された。
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