研究課題/領域番号 |
21K07041
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木本 貴士 徳島大学, 先端酵素学研究所, 特任助教 (90724261)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新型コロナワクチン / 粘膜アジュバント / 肺サーファクタント |
研究実績の概要 |
2019年末から全世界で感染が蔓延した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 (SARS-CoV-2) は、新型コロナウイルス感染症2019 (COVID-19) を引き起こし、健康や人命のみならず社会・経済活動にも大きな影響を与えている。本研究では、当研究室が開発した肺サーファクタント由来アジュバントSF-10を用いて安全かつ有効なCOVID-19ワクチンを開発することを目的としている。初年度は、抗原の選別、抗原とアジュバントとの混合法の最適化、有効な投与経路の確認を行った。抗原の種類は、大きく分けてウイルス不活化抗原と組み換えタンパク質があるが、検討の結果、株化細胞であるヒト胎児腎細胞293 (HEK293) 発現のS1組み換えタンパク質を本研究に使用することに決定した。S1はSARS-CoV2のウイルス表面に存在するspikeタンパク質の受容体結合領域を含むタンパク質であり、この受容体結合部位が感染宿主のアンギオテンシン変換酵素2 (ACE2) と結合することでウイルスは細胞内に侵入する。このS1の受容体結合部位に対する抗体は、ウイルスの感染を防ぐ中和抗体として働く。実際に、このS1をSF-10と混合し経気道または経口投与したところ、血液の抗S1 IgG抗体と気道粘膜の抗S1 IgA抗体が、強力に誘導されることを確認し、さらにこの抗体が中和抗体であることをS1とACE2結合阻害によって確認され、SF-10がCOVID-19ワクチンに有効なアジュバントであることが分かった。調製・混合法に関しては、インフルエンザワクチン開発研究時に行った方法と同じ方法でも有効性が確認されたが、よりCOVID-19ワクチンに合った調製法を今後検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標である、抗原の選別、投与経路の確認、SF-10と抗原の混合法の最適化のほとんどの部分を達成できたため、おおむね順調に進展しているとした。加えて、SタンパクとACE2の結合阻害試験を行うことで、SF-10の実際の感染防御における有効性についても確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、誘導された免疫の質を解析するために、抗体産生細胞の検出や各種サイトカイン測定を行う。加えて、SF-10の有効性が世界中で開発が進められているCOVID-19ワクチンの中でどの程度なのかを調べるために、例えば臨床試験が進んでいるAS03アジュバント等と比較検討を行うと同時に免疫持続を確認するための試験も開始する。
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