研究課題/領域番号 |
21K07045
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
大桑 孝子 金沢医科大学, 医学部, 助教 (20460347)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Saffold virus / 感染受容体 / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
Saffold virus (SAFV) は、ヒトに感染するピコルナウイルス科カルジオウイルス属のウイルスである。世界各地で気道炎、胃腸炎、手足口病様疾患、無菌性髄膜炎、脳炎、膵炎など様々な検体から検出されており、多様な疾患の原因になると考えられている。しかし、ウイルスに対する感受性を決定する重要な宿主因子である感染受容体は同定されていない。本研究は、CRISPR/Cas9 システムを用いたスクリーニングによって得られた SAFV の感染、増殖に関わる遺伝子の機能解析から感染受容体を同定し、最終的に SAFV の病原性発現の分子機構を明らかにすることを目的とする。 これまでに、CRISPR/Cas9 システムを用いて SAFV 高感受性細胞の遺伝子を網羅的にノックアウトし、SAFV 非感受性となった細胞から感染受容体遺伝子の候補を抽出した。その解析から、へパラン硫酸 (HS) が SAFV の感染に重要であることを見出した。しかし、細胞表面に HS が存在しない細胞において、SAFV 感染の明らかな遅延が見られるものの、感染を完全には阻害することはできなかった。このことから、SAFV の吸着・侵入の過程には複数の宿主因子が関与していることが示唆された。 令和3年度は、HS 以外の SAFV の吸着・侵入に関わる宿主因子を同定するために、細胞表面に HS が存在しない (HS(-)) 細胞株の樹立を行い、HS(-) 細胞株を用いた CRISPR library スクリーニング を開始した。現在このスクリーニングの過程が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR library スクリーニングでは、SAFV 感染後、網羅的な遺伝子ノックアウトによって SAFV 非感受性となった細胞が生き残ってくる。この生残細胞に導入された sgRNA の配列から、SAFV 感染に関わる宿主遺伝子を抽出する。令和3年度に樹立した細胞表面に HS が存在しない細胞株を用いたスクリーニングにおいて 、その生残細胞数が、以前に HS を細胞表面にもつ細胞を用いて行った CRISPR library スクリーニングの生残細胞数よりも明らかに多かった。このことから、 目的である HS 生合成関連遺伝子以外の宿主因子が候補遺伝子として抽出されてくることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
CRISPR library スクリーニングにおいて、SAFV 感染後の生残細胞に導入されている sgRNA の配列を次世代シーケンシング (NGS) により決定し、SAFV の感染・増殖を促進する候補遺伝子を抽出する。得られた候補遺伝子群からその遺伝子産物の特性(膜タンパク質か否か、局在など)によって受容体候補遺伝子を選出する。それらの候補遺伝子産物が SAFV 受容体であることを確認するために、以下の解析を行う。(1) 候補遺伝子を非感受性細胞に発現させ SAFV に対する感受性を獲得することを確認する。(2) SAFV 感受性細胞あるいは HS(-) 細胞で候補遺伝子をノックアウトし、ウイルスの吸着、感染が妨げられ SAFV 耐性になることを確認する。(3) 候補因子に対する抗体を用いてブロッキングアッセイを行う。(4) 候補因子と SAFV 粒子の結合をプルダウンアッセイ等によって確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は受容体候補遺伝子の選出にまで至らず、次年度に候補遺伝子の解析を行うことになったため未使用額が生じた。未使用額は、スクリーニングの結果得られた候補遺伝子について SAFV 感染における機能を解析するための実験試薬、培地、器皿類を購入する物品費として使用する計画である。
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