ウイルス感染を制御する宿主の抗ウイルス因子を同定することを目標とし、CRISPR-dCAS9遺伝子発現活性化型ライブラリーと風疹ウイルスを用いたスクリーニングを計画した。これまでに16種類のインターフェロン誘導遺伝子(ISG)の抗風疹ウイルス活性をテトラサイクリン誘導性発現細胞にて確認したところ、6種類のISGが風疹ウイルスの増殖を有意に抑制することを明らかとした。そこで、この内の最も抗風疹ウイルス活性の高い遺伝子を利用し、CRISPR-dCAS9遺伝子発現活性化型ライブラリーの有用性を検討した。具体的には、当該遺伝子の発現を活性化できるガイドRNA発現ベクターを作製し、dCas9-VP64タンパク質と共に風疹ウイルス高増殖細胞(IFN系欠損細胞)に導入した。ガイドRNAの導入により当該遺伝子の発現が上昇するかを確認したところ、IFN系を欠損していない細胞に風疹ウイルスを感染させた際と同程度の自然なレベルの発現上昇が認められた一方で、先に実施していたテトラサイクリン誘導性発現と比較すると極めて発現誘導が弱いことが判明した。この細胞に風疹ウイルスを感染させたところ、やや感染の広がりが軽減する程度であった。そこで、実際のスクリーニングと同様のHSV-TK発現組換え風疹ウイルスによる細胞死解析を実施したところ、当該遺伝子のガイドRNA導入細胞では生存細胞が増加しないのに対して、テトラサイクリン誘導性発現の場合には、細胞が50~70%生存することが確認できた。以上の結果から、CRISPR-dCAS9遺伝子発現活性化型ライブラリーを用いた場合は発現誘導性が比較的弱く、風疹ウイルスの増殖を強く抑制しうる未知の遺伝子を同定する際には有用なツールになりうる可能性が示唆された。
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