研究課題/領域番号 |
21K07051
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 昌彦 浜松医科大学, 医学部, 助教 (50385423)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / 潜伏感染 / 再活性化 / HBVcccDNA / SET |
研究実績の概要 |
慢性B型肝炎感染において、HBVウイルスゲノムは安定的なエピソーマルDNA(cccDNA)として肝細胞の核内に潜伏している。この潜伏維持状態は終生つづき、免疫抑制剤・抗がん剤などをきっかけとして、オカルトHBV感染やde novo急性B型肝炎などの再活性化を引き起こす。感染直後はcccDNAやpgRNAなどの発現レベルは高いが、時間経過に伴いその発現レベルは次第に低下し、潜伏感染状態へと移行する。このような潜伏感染状態の維持や再活性化に関するメカニズムについて、現在までまったく分かっていない。 これまでに、cccDNAと宿主タンパク質をクロスリンク、ショ糖密度勾配により分画することで、cccDNA 結合タンパク質としてSETを同定した。SETのノックダウン、ノックアウト細胞ではpgRNAレベルやcccDNA複製を亢進することから、SETがHBV複製を抑制していることを明らかにした。また抗腫瘍薬ダサチニブ、ボスチニブ、メトトレキサートおよび副腎皮質ステロイド薬デキサメタゾンなどの添加培養によって、SET遺伝子のプロモーター活性およびmRNAの発現が低下することを明らかにした。本年度は、IP-MSにより同定したH2AXがSETと相互作用すること、またその相互作用はHBV感染により減弱することを近位依存性ビオチン化酵素AirIDを用いた アッセイにより明らかにした。本研究による成果は、cccDNAの形成・維持、活性化の分子機構を解明するだけでなく、ウイルス再活性化という医療的にも重要な問題を克服するための治療への進展が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた本年度すべての実験を達成することができなかったが、おおむね予定通り研究を遂行することができた。また本年度、HBV DNA修復におけるSETの機能を解析をするためにdslDNAのみを産生する欠損変異HBVの作成に成功した。次年度、速やかに計画研究を実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はdslDNAのみを産生する欠損変異HBVを用いて、SETの発現低下によるHBV 再活性化にdslDNAの修復によるcccDNA形成が関わっているかを明らかにする。また、欠失・変異を導入したSET遺伝子プロモーターLuciferaseレポーターベクターを用いることでSETの発現を制御する転写因子、上流のシグナルを同定する。
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