エボラウイルスのウイルスゲノムRNAは多数の核タンパク質(NP)分子と螺旋状の複合体を形成し、さらにVP24およびVP35が結合して成熟ヌクレオカプシドを形成する。このヌクレオカプシドは、ゲノムRNAの合成を担う分子複合体であり、細胞内でのウイルスRNAの輸送もヌクレオカプシドの形態で行われる。これまでNP-RNA複合体の構造は明らかにしたが、ヌクレオカプシドの詳細な構造は明らかではなかった。本年度は、ヌクレオカプシドの形成機構と分子機能の構造基盤を明らかにするため、ウイルス様粒子内のヌクレオカプシド様構造を単粒子クライオ電子顕微鏡法を用いて解析した。その結果、4.6オングストロームの分解能でVP24を含むヌクレオカプシド様構造が明らかになった。また、複合体構造から、2つのNPと2つのVP24の間の特異的な相互作用機構が同定された。さらに、分子構造に基づいた変異体解析により、異なる方向性を持つ2つのVP24がヌクレオカプシドの組み立て、ウイルスRNAの合成、及びヌクレオカプシドの細胞内輸送をそれぞれ独自に調節することが示唆された。本研究により、ヌクレオカプシドの組み立ておよびRNA合成の複雑な制御機構の理解が深まった。本研究内容は、学術論文として纏めプレプリントをbioRxivで公開した。また、査読付論文としての公開に向けて投稿中である。
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