ボルナ病ウイルスはヒトに病原性をほとんど示さないと考えられてきたが、臓器移植による伝播をきっかけに致死性脳炎を起こすことが明らかになった。しかし同ウイルス特異的な治療法は確立されていない。申請者はこれまでに化合物ライブラリのハイスループットスクリーニングにより、抗ボルナ病ウイルス活性を示す化合物を同定した。同定した化合物のIC50は7.5μMで、20μMで細胞毒性を示した。本化合物の作用点を評価したところ、細胞内侵入の特に吸着過程に関与することが示唆された。一方で、欠損ウイルスを用いた評価によりウイルスのMタンパク質を標的としている可能性が示された。また同化合物はトリボルナウイルスにも阻害作用を示した。本研究はボルナ病ウイルスによる致死性脳炎の治療法の開発に貢献するものと考えられる。
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