研究課題/領域番号 |
21K07055
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岸本 直樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 助教 (80756148)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HIV / 宿主因子 / 代謝 / 糖代謝リプログラミング |
研究実績の概要 |
HIV感染症の治療戦略を講じる上での障壁のひとつは潜伏感染リザーバーを排除できないことであり、実際の生体内での細胞状態を考慮しながら潜伏感染リザーバーの動きを突き止める必要がある。申請者は前年度に、代謝状態が異なるHIV感染細胞の細胞内プロテオームの比較を実施し、代謝状態に応じて特定のタンパク質の等電点が異なることを見出している。また、代謝状態の変化が潜伏感染細胞の再活性化に影響を与えるという結果を得ている。そこで2022年度は、前年度に等電点がシフトすることを突き止めたタンパク質の解析を主に行った。その結果、このタンパク質は好気的解糖状態において核以降レベルが増加し、ヒストンのアセチル化レベルを増加させることを明らかとした。またこのタンパク質は好気的解糖状態において一部リン酸化を受け、リン酸化体が核以降する可能性があることを見出した。一方このタンパク質は好気的解糖阻害条件においてはウイルス粒子内に多く取込まれること、このタンパク質の取込量が増加したウイルスは感染力価が低下することを明らかとした。さらに代謝状態とPKCのサブタイプの関連を調べ代謝状態に応じてPKC活性化剤の感受性がことなることを明らかとした。本結果は、好気的解糖状態においてタンパク質の翻訳後修飾レベルが変化しタンパク質の機能が調整される機構をウイルスがハイジャックしていることを示しており、HIV感染細胞がおかれる環境、代謝状態が感染リザーバーの成立に寄与することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代謝状態の変化が潜伏感染細胞に寄与するという結果が得られている。潜伏感染に関与するタンパク質の候補を同定できそのメカニズムに迫る結果が得られている。また代謝状態とPKCサブタイプの関連に関する情報が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
同定したタンパク質によるエピジェネティックなprovirusの転写調節機構を明らかとする。また生体内に則した環境でのHIV潜伏感染細胞の樹立を行い、PKCを標的とする潜伏感染活性化剤の探索を実施する。さらに潜伏リザーバー成立に寄与しうる宿主性タンパク質のさらなる探索を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の消耗品の年度内納品が難しいと判断したため、次年度購入とした。それに伴い実験計画の一部を2023年度から2022年度に入替えて対応したため、研究計画として遅延は伴わない。
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