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2021 年度 実施状況報告書

ライブイメージング法による重症熱性血小板減少症候群ウイルス複製機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K07059
研究機関長崎大学

研究代表者

高松 由基  長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (00750407)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード重症熱性血小板減少症候群 / 細胞内動態 / ライブセルイメージング / RNP / リバースジェネティクス
研究実績の概要

ライブセルイメージング技術は病原体の細胞内複製機構を理解するために非常にパワフルで有用である。本研究では新興感染症の病原体として本邦で重要な高病原性ウイルスである重症熱性血小板減少症候群ウイルス:SFTSVの複製機構を、ライブセルイメージングを用いて解明する。SFTSVの細胞内動態はほとんどわかっておらず、移動に関わる宿主因子も不明である。病原体の細胞内動態を解明することは、侵入経路・輸送経路や介在タンパク質、出芽制御因子を介した治療法を開発するための基盤となることが期待される。
研究代表者は前駆研究で、リボ核タンパク質複合体(RNP)やウイルス粒子などウイルスタンパク質複合体の細胞内での形成過程・輸送経路を描出するライブセルイメージングシステムを構築し、病原体の細胞内動態を解明することに成功した(Takamatsu, et al. PNAS. 2018, Takamatsu, et al. J. Virol. 2020)。本研究では、このシステムを応用しSFTSVの細胞内動態について宿主因子を含めて解明することを目的とする。
一年目である本年は、本研究で設定した五つの到達目標のうち、到達目標1(感染細胞におけるRNPおよびウイルス粒子の細胞内動態をライブセルイメージング顕微鏡で明らかにする)を達成し、到達目標2(非感染性のライブセルイメージングシステムを構築し、RNPやウイルス粒子の細胞内輸送における分子機構を明らかにする)についても部分的に達成することができた。具体的にはウイルスゲノムを直接カプシド化している核タンパク質(NP)、ポリメラーゼタンパク質(L)、及び表面糖タンパク質(GP)、非構造タンパク質(NS)を蛍光標識し、ウイルス感染細胞における各タンパク質の細胞内動態を描出することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、五つの到達目標を定めて、全体を通して「SFTSVの細胞内複製機構を制御する新しい治療薬開発の基盤を構築する」という大目標を達成したいと考えている。到達目標①感染細胞におけるRNPおよびウイルス粒子の細胞内動態をライブセルイメージング顕微鏡で明らかにする。目標②続いて非感染性のライブセルイメージングシステムを構築し、RNPやウイルス粒子の細胞内輸送における分子機構を明らかにする。目標③リバースジェネティクスを用いて単粒子解析を可能にする蛍光発現組換えウイルスを構築し、宿主細胞への侵入機構を解明する。目標④ 2, 3で構築するライブセルイメージングシステムを用いて、ウイルスRNP・ウイルス粒子の侵入・形成および輸送を介在する宿主細胞因子を同定する。目標⑤これまでの過程で構築する組み換えウイルス、RNPおよびRNP様構造を精製し、微細構造解析を行うことでウイルスゲノムの複製機構を解明したい。本年度は、各ウイルスタンパク質の哺乳類細胞発現系を構築し、感染細胞におけるウイルスタンパク質の細胞内動態を観察した。また、複数のウイルスタンパク質を細胞内に発現することで、相互作用するウイルスタンパク質の組み合わせを同定することができた。一方で、研究代表者の異動(国立感染症研究所→長崎大学)の影響から、目標 ③~⑤については、まだ到達していない。したがって、ある程度の成果を認めた一方で、今後の更なる進捗が望まれることから、概ね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

まだ到達していない目標を達成するために、まずは到達目標2の続きとして、ウイルスタンパク質発現系にウイルスRNAを導入し、RNP様構造の形成・輸送に必須なウイルス因子を同定する。これにより、タンパク質発現系を用いてウイルスRNPの細胞内動態をモデル化することが可能になる。続いて、どのウイルスタンパク質のどのドメインがRNP形成・輸送を制御するか欠損変異体、点変異体を用いて解明する。こうして同定したRNP形成・輸送を制御する変異体をリバースジェネティクスで構築し、ウイルスの性状解析を行う。さらに、単粒子解析を可能にする蛍光発現組換えウイルスを構築し、宿主細胞への侵入機構を解明したい。
また構築する変異体を用いてRNP様構造を形成し、細胞内から抽出・精製し、介在する宿主因子を網羅的に回収し、プロテオミクスアプローチでRNPの形成および輸送を制御する宿主タンパク質の候補を限定する。特に相互作用が強かった宿主因子について、機能阻害剤や特異抗体、遺伝子サイレンシグ法などを用いて発現を制御し、その影響を評価する。他の方法として、組換えウイルスのアッセイ系に化合物ライブラリーを導入し、ウイルスの増殖を抑制する化合物を探索する。その化合物がウイルスの侵入・形成・輸送・放出のどの部分に効果を認めるか、構築したアッセイ系で評価する。以上から高病原性ウイルスの複製を制御する方法について、そのメカニズムも含めて明らかにしたい。最後に、これまでの過程で構築する組み換えウイルス、RNPおよびRNP様構造を精製し、微細構造解析を行うことでウイルスゲノムの複製における分子機構を解明したい。以上から、感染細胞におけるRNP・感染性ウイルスの侵入・形成・輸送・出芽過程の分子機構を解明し、ウイルスの複製を制御する新しい治療薬開発の基盤を構築したい。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Structural insight into Marburg virus nucleoprotein-RNA complex formation.2022

    • 著者名/発表者名
      Yoko Fujita-Fujiharu, Yukiko Sugita, Yuki Takamatsu, Kazuya Houri, Manabu Igarashi, Yukiko Muramoto, Masahiro Nakano, Yugo Tsunoda, Steohan Becker, Takeshi Noda.
    • 雑誌名

      Nature Communications.

      巻: 13(1) ページ: 1-9

    • DOI

      10.1038/s41467-022-28802-x.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] ウイルス粒子の形成過程を視る ─ ライブセルイメージングシステムを用いた高病原性ウイルス細胞内動態の解明2022

    • 著者名/発表者名
      髙松 由基
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 280 ページ: 926-932

  • [雑誌論文] CP100356 Hydrochloride, a P-Glycoprotein Inhibitor, Inhibits Lassa Virus Entry: Implication of a Candidate Pan-Mammarenavirus Entry Inhibitor2021

    • 著者名/発表者名
      Toru Takenaga, Zihan Zhang, Yukiko Muramoto, Sarah Katharina Fehling, Ai Hirabayashi, Yuki Takamatsu, Junichi Kajikawa, Sho Miyamoto, Masahiro Nakano, Shuzo Urata, Alison Groseth, Thomas Strecker, Takeshi Noda.
    • 雑誌名

      Viruses

      巻: 13(9) ページ: 1-13

    • DOI

      10.3390/v13091763.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The novel therapeutic target and inhibitory effects of PF-429242 against Zika virus infection.2021

    • 著者名/発表者名
      Sandra Kendra Raini, Yuki Takamatsu, Shyam Prakash Dumre, Shuzo Urata, Shusaku Mizukami, Meng Ling Moi, Dasuke Haysaka, Shingo Inoue, Kouichi Morita, Mya Myat Ngwe Tun.
    • 雑誌名

      Antiviral Research.

      巻: 192 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1016/j.antiviral.2021.105121.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Development of an RT-LAMP Assay for the Rapid Detection of SFTS Virus.2021

    • 著者名/発表者名
      Shiori Sano, Shutetsu Fukushi, Souichi Yamada, Shizuko Harada, Hitomi Kinoshita, Satoko Sugimoto, Tomoki Yoshikawa, Takeshi Kurosu, Yuki Takamatsu, Masayuki Shimojima, Shoichi Toda, Yuka Hamada, Naoki Fujisawa, Takayuki Sugimoto, Masayuki Saijo.
    • 雑誌名

      Viruses

      巻: 13(4) ページ: 1-11

    • DOI

      10.3390/v13040693.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] フィロウイルスヌクレオカプシド形成機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      高松 由基、Olga Dolnik、野田 岳志、西條 政幸、Stephan Becker
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] オートファジー誘導によるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス感染細胞の細胞死回避2021

    • 著者名/発表者名
      梶川 純一, 平林  愛, 宮本  翔, 高松 由基, 胡  上帆, 野澤 孝志, 中川 一路, 浦田 秀造, 安田 二朗, 遊佐 宏介, 中野 雅博, 村本裕紀子, 野田 岳志
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] エストロゲン受容体作動薬はラッサウイルスの細胞侵入を阻害する2021

    • 著者名/発表者名
      張  子涵, 武長  徹, 村本 裕紀子, Katharina Fehling Sarah, 平林  愛, 髙松 由基, 梶川 純一, 宮本  翔, 中野 雅博, 浦田 秀造, Groseth Allison、Strecker Thomas, 野田 岳志
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] 迅速・簡便かつ正確なRNAウイルスの全ゲノム配列決定法の確立2021

    • 著者名/発表者名
      三須 政康, 吉河 智城, 黒須  剛, 高松 由基, 王寺 幸輝, 下島 昌幸、吉川 正英, 西條 政幸
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] SFTSウイルス遺伝子を保持する高度弱毒化痘そうワクチン株LC16m8を免疫したマウスで誘導される液性免疫のワクチン効果への寄与2021

    • 著者名/発表者名
      吉河 智城, 三須 政康, 黒須  剛, 高松 由基, 杉元 聡子, 下島 昌幸, 西條 政幸
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] SFTSウイルスの新規病原因子の同定2021

    • 著者名/発表者名
      下島 昌幸, 米満 研三, 網  康至, 杉元 聡子, 髙松 由基, 吉河 智城, 黒須  剛, 西條 政幸
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] 致死性デング出血熱マウスモデルを用いた高サイトカイン産生誘導による重症化機序の解明2021

    • 著者名/発表者名
      黒須  剛、 奥崎 大介, 下島 昌幸, 吉河 智城, 髙松 由基, 西條 政幸
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] マールブルグウイルス 核タンパク質-RNA複合体の構造解析2021

    • 著者名/発表者名
      藤田 陽子, 杉田 征彦, 髙松 由基, 祝部 和也, 五十嵐 学, 角田 優伍, 村本裕紀子, 中野 雅博, Becker Stephan, 野田 岳志
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会

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公開日: 2022-12-28  

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