研究課題/領域番号 |
21K07061
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
野村 拓志 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 講師 (80711001)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SIV / HIV / CTL / 複製制御 / 免疫ドミナンシー / 複製非制御個体 / エピトープ領域 / 変異選択 |
研究実績の概要 |
抗レトロウイルス薬治療(ART)の進歩と普及により世界でのAIDS発症による死者数は減少しているものの、HIVは感染細胞の染色体内にプロウイルスとして長期間存在し、体内から完全に排除することはできない。病態の進行を抑えるためには抗HIV薬の服用を一生涯続ける必要があり、HIVの完治を目指した一般的な治療は現在までになく、その確立が望まれる。HIV感染者からのウイルスの完全な排除のため、CTL反応と体内ウイルス排除の機構のより詳細な解析は、完治に向けた基礎知見となりうる。 アカゲザルにおけるサル免疫不全ウイルス(SIV)感染エイズモデルは、ヒトのHIV感染症と近似性の高い病態を示す動物モデルである。これまでの研究によりMHC-Iハプロタイプ90-120-Ia共有サルのMHC-I拘束性エピトープの基礎的な知見が蓄積されている。MHC-Iハプロタイプ90-120-Ia共有SIV Progressorの血漿中SIV RNAゲノムをRT-PCR法を用いて増幅し、エピトープ領域の塩基配列から経時的にかつ短間隔にアミノ酸配列を解析し、これらのエピトープに変異選択が生じた感染後の週数を決定した。特にエピトープ内における最初の変異選択がなされるtime point周辺では、サンプルに制限がないかぎり4週毎に評価を行うことで高精度の解析とした。この情報からSIV Progressorでの各エピトープ領域内における変異の出現時期および順序のパターンを明らかにするとともに、一部のエピトープ特異的なCTL反応の誘導時期および順序のパターンを同様に解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではMHC-Iハプロタイプ90-120-Ia共有SIV Progressorに着目し、細胞性免疫応答と逃避変異選択の詳細な解析を行い、細胞免疫応答のドミナンシーと複製制御の機序を明らかとすることが目的のひとつであった。これまでの解析によりこの目的はほぼ達成されており、査読付学術論文にも研究成果の報告を行った。本研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
MHC-Iハプロタイプ90-120-Ia共有SIV Controllerの一部の個体では、GagのCTLエピトープに対してCTL逃避変異が蓄積した結果、Gagのエピトープ特異的なCTL応答の有効性が低下し、かわってVif114-124およびNef193-203エピトープ特異的CTLが誘導されることで感染後2年以降に複製制御維持に寄与する場合があることを申請者は過去に報告している。今後はMHC-Iハプロタイプ90-120-Ia共有SIV ControllerとProgressorのCTL応答誘導と逃避変異選択のドミナンシーの比較を行うことで、protective MHC-I遺伝子であるMHC-Iハプロタイプ90-120-Iaを共有するサルがSIV感染後に複製制御に至るか否かを規定するウイルス側・宿主免疫側の因子を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年2月に所属機関を異動した関係で、事務手続きの都合上、2021年度中に支払いが完了しなかったため。3年間の研究計画の中で、全体の研究計画および助成金使用計画に実際の影響はない。
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