Aspergillus fumigatus (A. fumigatus)は、真菌(カビ)の一種で環境中に常在するため、ヒトは日常的に暴露されている。通常、健常人に病気を起こすことは稀であるものの、高齢者やがん患者など免疫機能が低下した患者に対して、生命を脅かす重度の侵襲性感染症を引き起こすことが多く、我が国の医療施設に大きな負担をかけている。しかし、A. fumigatusに対する宿主防御の機構はこれまで不明な部分が多くありました。そこで、本研究では、マウスモデルを用いて、糖鎖を認識する分子群であるC 型レクチン受容体がどの様に真菌を認識し、その後の免疫応答を誘導し、最終的に排除するまでの機構について解析した。 その結果、C 型レクチン受容体ファミリー分子のDectin-1 が全身性アスペルギルス症に対する防御機構に不可欠であることが明らかとなった。まず侵襲性感染のマウスモデルを用い、腎臓における A. fumigatus の排除はナチュラル・キラー(NK)細胞に依存していることを見いだし、その機構として、dectin-1がA. fumigatusを認識し、サイトカイン IL-15 の分泌を誘導することでNK細胞の生存を支持していることを見出した。また、dectin-1、IL-15、NK細胞を介した機構では、過剰な炎症反応を誘発せずに病原体を排除し、臓器の恒常性を維持していることも明らかとなった。これらの結果から、真菌症に対する新たな治療法が開発されることが期待される。
|