研究課題/領域番号 |
21K07067
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
崔 广為 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (70791276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自然リンパ球 / 2型自然リンパ球 / アレルギー / 肺線維症 |
研究実績の概要 |
ILC2は迅速かつ大量に2型サイトカインを産生することにより感染防御の最前線に立つ自然リンパ球である。一方、ILC2は気管支喘息や食物アレルギーなどのアレルギー疾患と線維症の発症および増悪にも深く関与していることから、定常状態において細胞数と活性化を抑制するメカニズムの解明も重要である。本研究はまずCD45 KOマウスおよびCD45 KO×Rag2 KOマウスを用いた解析、骨髄キメラマウスを利用した野生型(WT)とCD45 KO ILC2細胞の競合実験などにより、新たに内因性の新規ILC2抑制因子としてCD45を同定した。 CD45の下流シグナルによって制御される遺伝子とILC2の各成熟段階におけるこれらの遺伝子の変化を明らかにするため、野生型(WT)とCD45 KOマウスの骨髄および肺から未熟ILC2または成熟ILC2を単離し、デジタルRNAシークエンス法にて網羅的な遺伝子発現を解析した。また、CD45はチロシン脱リン酸化酵素であるため、ILC2におけるCD45の基質に候補であるLck、SykやFynなどの脱リン酸化状態をWTとCD45 KOマウス間で比較した。CD45 KOマウスまたはCD45 KO×Rag2 KOマウスにおいて、ILC2、特にKLRG1陽性の成熟ILC2が著しく増加していたことから、重要な転写因子の発現、Ki-67染色やアポトーシス関連因子などの変化を検討し、このILC2の増加と細胞分化、生存や増殖の変化との関連性を調べた。さらに、ILC2はIL-7やIL-33などのサイトカインによって維持および活性化される。WTとCD45 KOマウス由来のILC2を刺激すると、IL-5とIL-13の産生が著しく亢進していた。よって、CD45が生体内ILC2の細胞数と活性を抑制していることを見出し、その分子メカニズムも明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に計画していたCD45 KOマウスおよびCD45 KO×Rag2 KOマウスを用いた解析はほぼ予定通りに実施することが出来た。また、CD45の下流シグナルによって制御される遺伝子とILC2の各成熟段階におけるこれらの遺伝子の変化を明らかにするため、計画していたデジタルRNAシークエンス法による網羅的な遺伝子発現解析も予定通りに進んでおり、CD45が生体内ILC2の細胞数と活性を抑制する分子メカニズムも明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
ILC2は組織常在性リンパ球として知られているが、CD45がILC2のホーミングと組織常在性にどのように影響するのかをILC2移植やparabiosisによって評価する。また、生体内のCD45のリガンドとして機能する物質を探索し、その阻害剤の投与により、ILC2の分化、成熟、維持と機能の変化を検討する。 これまでにILC2は気管支喘息や食物アレルギー、肺線維症の発症・重症化への関与が報告されていた。CD45 KO×Rag2 KOマウスを用い、パパインやHDMなどの刺激による喘息モデルで肺におけるILC2の活性化状態や病態の進行状況や程度を評価する。また、ピーナッツ粉末とコレラ毒素を用いた食物アレルギーモデルも検討する。さらに、組織の線維化を起こすブレオマイシンを投与する肺線維症モデルを用いて解析する。同時に、CD45 KO×Rag2 KOマウスを2型サイトカイン(IL-5とIL-13)レポーターマウスと交配し、疾患モデル誘導時に生体内におけるILC2の成熟・活性化状態、局在と機能変化、病態の進行状況をモニターする。また、疾患モデル誘導時には阻害剤などの投与実験や、in vitroで増殖・活性化したWTまたはCD45 KOマウス由来ILC2の移植実験も行い、2型サイトカイン(IL-4、IL-5やIL-13)の産生量や病態の進行状況を解析する。
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