研究実績の概要 |
本研究課題の目的は新型コロナウイルスの自然免疫応答の分子機構の解明と、宿主のI型インターフェロン産生を新型コロナウイルスが抑制するメカニズムの解明の二つである。申請者は新型コロナウイルス感染細胞から抽出したRNAを細胞に導入し、インターフェロン応答を調べた。その結果、新型コロナウイルスRNAにはI型インターフェロン誘導能が有ることがわかった。また、ゲノム編集技術を用いて細胞質内の核酸センサーであるRIG-IとMDA5のノックアウト細胞を作製し新型コロナウイルスRNAを用いて刺激した結果、RIG-IとMDA5両方ともがウイルスRNA認識に必須であることがわかった。更に、コロナウイルスRNAを1K base ずつ分割してRNAを人工的に合成し、哺乳細胞にトランスフェクションした。その結果、I型インターフェロンを誘導するRNAの部位の同定に成功した。そのRNAの二次構造を予測した結果、I型インターフェロンの誘導可能なRNAは部分的に2本鎖構造を取っていることがわかった。これはRIG-IやMDA5が新型コロナウイルスを認識するという結果と一致している。 更に、宿主のI型インターフェロン経路を新型コロナウイルスが抑制するメカニズムの解明のために、コロナウイルスのアクセサリータンパク質を全てクローニングし、I型インターフェロンのプロモーターレポーター法でインターフェロン誘導能を評価した。その結果、7a, 7b, 9b, 14, 3CLにはI型インターフェロンの誘導を抑制する機能があることがわかった。
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