ウイルス感染に対する自然免疫応答は、インターフェロン産生によるウイルスの排除や獲得免疫の誘導において重要な役割を果たす。本研究は、パンデミックを引き起こした新型コロナウイルスを含むコロナウイルスに対する自然免疫応答機構の解明を目的とする。申請者は、これまでRIG-I様受容体とToll like receptor 3 (TLR3)によるウイルス核酸認識機構の研究を行っており、LGP2がユビキチン化されることによるインターフェロン抑制機構の解明 (EMBO Rep. 2023) や、ZNF598によるRIG-Iの活性化抑制機構の研究 (Cell Rep. 2019) を行ってきた。本研究では、RIG-I依存的な自然免疫経路とTLR3依存的な自然免疫経路、ウイルスによるその抑制機構に特に焦点を当て研究を行う。 3年間の助成期間の中間にあたる本年度は、新型コロナウイルスの自然免疫認識機構の新たな役割の解明に取り組んだ。新型コロナウイルスは気管上部などに感染して、重症化すると肺胞なども含めた呼吸器全体へと感染が広がる。これまで、我々を含め多くの研究者らによって新型コロナウイルスはRIG-I様受容体によって認識されることを報告している。これらの研究は主に肺胞上皮細胞など上皮細胞を使った実験で示しており、肺を含む全身に存在するマクロファージや樹状細胞における新型コロナウイルスの自然免疫認識機構は未解明のままであった。我々はRLRやTLRを欠損したマウスから分離した樹状細胞やマクロファージを使って、新型コロナウイルスに対する自然免疫応答を調べた。ミエロイド系の細胞ではTLR優位にウイルスを認識していることが明らかとなった。
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