性別不一致造血幹細胞移植と抗Y染色体抗原特異的B細胞の獲得

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 21K07070
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 仲宗根 秀樹 自治医科大学, 医学部, 准教授 (50757903)
• 研究分担者: 神田 善伸 自治医科大学, 医学部, 教授 (30334379)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 性別不一致移植 / マイナー抗原 / 同種免疫

研究実績の概要

#1 Y染色体上抗原（HY抗原）の中から、UTY、SMCY、DBY、SRYを選択し、それぞれのX染色体上のcounterpartと比較し、相違部を同定し、20－30アミノ酸配列による同種免疫標的抗原ペプチドを同定。これらペプチドに蛍光色素を修飾したものをカスタム合成した。現在、性別不一致移植検体を用いて、HY抗原ペプチド反応B細胞の検出が可能かについて検討し、現在も症例を蓄積している。
#2 同様に、各HLAと、HY抗原ペプチドとの結合親和性予測を行い、HLA-A02におけるUTY、SMCYのペプチドを標的としたテトラマーを作製し、性別不一致移植検体を用いて、HY抗原ペプチド反応T細胞の検出可能かについて検討し、現在も症例を蓄積している。
#3 血液腫瘍患者で時折観察されるY染色体の欠失と性別不一致移植患者における移植片対白血病効果について検証した。女性ドナー・男性レシピエントの同種造血細胞移植において、Y染色体が欠損している症例と保たれている症例で予後の比較を行ったところ、Y染色体欠損症例では再発リスクが増加し全生存率が不良となることが判明した。マイナー抗原であるY染色体抗原欠失が抗腫瘍L効果の減弱・腫瘍免疫回避に関わる可能性を臨床的に初めて示しBlood Advancesに掲載された (2022 Mar 22;6(6):1895-1903). 論文タイトル：Deletion of Y-chromosome before allogeneic hematopoietic stem cell transplantation in male recipients with female donors.

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マイナー抗原であるY染色体抗原欠失が抗腫瘍L効果の減弱・腫瘍免疫回避に関わる可能性を臨床的に初めて示しBlood Advancesに掲載されたため。

今後の研究の推進方策

HY抗原反応性のB細胞、T細胞の検出について、引き続き同種移植後の実患者検体を用いて実施し、症例を蓄積して検証を行う。
また、同時に性別不一致移植における臨床情報の解析について積極的に発信する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ拡大の影響で、使用予定の試薬の納品が遅れる可能性があったため。当該年度ので発注を避けることにした。
額も少額であり、本年度と請求した助成金と合わせても使用計画に変更はない。

研究成果

• [雑誌論文] Deletion of Y-chromosome before allogeneic hematopoietic stem cell transplantation in male recipients with female donors. (2022)
  • 著者名/発表者名: Masaharu Tamaki, Kazuaki Kameda, Shun-ichi Kimura, Naonori Harada, Naoyuki Uchida, Noriko Doki, Masatsugu Tanaka, Kazuhiro Ikegame, Masashi Sawa, Yuta Katayama, Shigesaburo Miyakoshi, Takahide Ara, Junya Kanda, Makoto Onizuka, Takahiro Fukuda, Yoshiko Atsuta, Yoshinobu Kanda, Kimukazu Yakushijin, Hideki Nakasone
  • 雑誌名: Blood Advances 巻: 6 ページ: 1895-1903
  • DOI: 10.1182/bloodadvances.2021006456.
  • 査読あり / オープンアクセス