研究実績の概要 |
骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndromes, MDS)は造血幹細胞で生じた遺伝子変異に起因して発症する難治性疾患であり、無効造血に伴う血球減少と異形成を大きな特徴とする。遺伝子発現調節因子High mobility group AT-hook 2(HMGA2)は、造血器腫瘍において原疾患の病態増悪因子として知られており、これまでに骨髄線維症やMDS などで高発現の症例が報告されている。しかしながらHMGA2の高発現がどのようにMDS病態に関与するかはわかっていなかった。我々は HMGA2 高発現 MDS モデル動物を作出し、HMGA2 が MDS において器質化肺炎(免疫応答異常)を引き起こすことを突き止めていた。そこで本研究では HMGA2 高発現が器質化肺炎を引き起こす機序を解明し、異常免疫応答の制御方法開発につなげることを目的とした。前年度までの解析により肺障害の責任免疫細胞が活性化血小板と結合した好中球であることが示唆されていた。最終年度は主にHMGA2が器質化肺炎を惹起する機序として活性化血小板結合好中球の関与を遺伝学的に検証した。血小板と好中球の結合を介しているP-selectinをノックダウンした結果、HMGA2 高発現 MDS マウスでは器質化肺炎の所見が改善された。したがって肺組織障害には活性化血小板と結合した好中球が関与することが明らかとなった。本研究成果よりP-selectin や好中球細胞死を標的とした新規治療戦略の有用性が強く示唆された。
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