研究課題/領域番号 |
21K07076
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸橋 拓海 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (60743961)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | LAG-3 / 免疫チェックポイント分子 / リガンド / 自己免疫 / がん免疫 |
研究実績の概要 |
抑制性免疫補助受容体LAG-3は、PD-1とCTLA-4に次ぐがん免疫療法の有力な標的として期待され、すでに多くの治験が進められている。しかし、真に機能的なリガンドの同定、それらリガンドによるLAG-3の抑制機能制御機構についての理解が遅れており、非常に大きな問題を抱えている状況にあることから、本研究では、その解明を目指す。 当該年度はまず、LAG-3のリガンド候補分子である、安定な構造を持つペプチド-MHC class II複合体(pMHCII)およびFGL1について解析を行った。LAG-3と各分子との結合について詳細な検証を行ったところ、pMHCIIおよびFGL1が共にLAG-3に強く結合すること、しかしその結合は互いに競合しないことが明らかになった。さらに、pMHCIIおよびFGL1それぞれとの結合を特異的に欠くLAG-3変異体を複数得ることに成功したことから、各リガンド分子の機能を個別に解析することが可能となった。そこで、これらLAG-3変異体を利用し、各リガンド分子との相互作用がLAG-3による免疫抑制機能にどのように寄与しているのか、T細胞株培養系およびアミノ酸変異ノックインマウスを用いて検討した。その結果、LAG-3がその機能を発揮し、T細胞の活性化、自己免疫応答、がん免疫応答を抑制するためにはpMHCIIとの結合が必要不可欠であることが明らかとなった。一方で、LAG-3はFGL1との相互作用のみでは機能を発揮できず、またpMHCIIとの相互作用によって発揮されるLAG-3の抑制機能にFGL1との結合は不要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、LAG-3の真に機能的なリガンドを決定することにより、LAG-3の抑制機能作動原理およびその制御機構を解明することを目的とする。これまでに、LAG-3とリガンド候補分子である安定な構造を持つpMHCIIおよびFGL1との結合について詳細に検証するとともに、各リガンド候補分子それぞれとの結合を特異的に欠くLAG-3変異体が複数得られている。さらに、それらLAG-3変異体を用いたin vitroおよびin vivo解析によって、LAG-3が免疫抑制機能を発揮する際に必須の機能的リガンドはpMHCIIであり、FGL1との結合は不要であること、を明確に示すことに成功したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度内に、安定な構造を持つpMHCIIおよびFGL1について、LAG-3リガンドとしての機能およびその機能的独立性・代償性・協調性を解析した。上述の通り、解析した全ての現象において安定なpMHCIIがLAG-3の機能を担うという実験結果が得られた。今後、これまでに検討していない何らかの現象において、FGL1がLAG-3の機能を誘導する可能性を検討するとともに、その他に報告されているリガンド候補分子、LSECtin、Galectin-3、α-synucleinについて同様の解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗により、当初の予定よりも多くの種類のLAG-3変異体の解析が必要になり、それらの作製と解析を優先したことから、一部の実験を次年度以降に実施することにした。これにより生じた次年度使用額については、次年度以降に実施することにした実験、これまでに得られた結果から新たに必要になった実験等に用いる試薬等の購入に使用する。
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