研究課題/領域番号 |
21K07078
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森田 大輔 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (40706173)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MHCクラス1 / リポペプチド / ミリスチン酸修飾 |
研究実績の概要 |
MHC分子は「ペプチド」を結合し、T細胞へと提示することにより、獲得免疫の発動を担う抗原提示分子である。他方、研究代表者はこれまでにアカゲザルエイズモデルの解析からウイルス由来の「リポペプチド」を提示する新しいタイプのMHCクラス1分子「LP1」を同定し、その構造と機能を明らかにしてきた。一方、リポペプチド特異的T細胞が認識する抗原エピトープは極めて限定的であり、免疫の基本原則である自己と非自己の識別が理論上困難である可能性が高い。そこで、本研究ではウイルス感染に伴うヒト自己免疫疾患の増悪とリポペプチド免疫との関連について検証することを目的とした。 研究初年度においては、ヒトLP1分子の探索を進めた。LP1分子のリポペプチドを収納する抗原結合ポケットには、ペプチド抗原提示を担うMHCクラス1分子とは対照的に、顕著に大きくまた疎水性アミノ酸が集中している。欧州バイオインフォマティクス研究所データベースに登録されている全ヒトHLAクラス1 アリルの中からこの性質を満たす候補アリル群を絞り込み、大腸菌リコンビナント蛋白質をインクルージョンボディーとして精製した。そして、これを緩衝液中でリポペプチド存在下にリフォールディングさせることで、リポペプチド結合能を評価した。特に結合活性が高いアリルについて、リポペプチド複合体のX線結晶構造解析を実施した。その結果、ヒトMHCクラス1においてもリポペプチドは両末端をアンカーとして結合することが示された。また、中央のアミノ酸は溶媒中に露出されることから、T細胞エピトープとして機能するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではヒトLP1トランスジェニック(Tg)マウスを樹立することで個体レベルでの解析までを見込んでいる。従って、早期に対象とするHLAアリルを選び出すことは極めて重要であるが、既に候補アリルの選抜を完了し、Tgマウスの樹立を完了しつつあることから、順調に進展している。これに加えて、候補アリルの構造解析から、ヒトLP1分子にはペプチドとリポペプチドという2つの異なるリガンドを収納するdual-functionがあることを見出した。これは想定を超える成果であり、「当初の計画以上に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
選抜したヒトLP1分子について、Tgマウスの樹立を完了し、その基本解析を進める。具体的には、トランスジーンの蛋白発現の評価、合成リポペプチドによる免疫賦活化法の確立、そして、リポペプチド搭載LP1テトラマーによるリポペプチド特異的T細胞集団の評価の3点が重点項目である。その後、当初の計画に従い、得られたTgマウスについて、自己反応性T細胞応答、自己抗体などバイオマーカーの定量、血管炎などの組織応答について解析を進め、自己免疫疾患とリポペプチド免疫との相関について総合的な判断を行う。相関を認めた場合、特異的ブロッキング抗体の使用を含め、その制御法についても探求を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額については、試薬類のディスカウント等によるものである。一方、次年度使用額はごく少額であることから、翌年度の助成金の使用計画について変更はない。
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