研究課題
エカルディ・グティエール症候群(AGS)はインターフェロン(IFN)の異常産生及び脳症を主症状とする遺伝性自己炎症疾患である。その原因遺伝子の一つであるADAR1は、2本鎖RNA中のアデノシンをイノシンへと置換するRNA編集酵素である。RNA編集が低下すると、内在2本鎖RNAが2本鎖RNAセンサー分子MDA5によって非自己として誤認されることがAGS病態の根底にあることがわかってきたが、AGS脳症を再現するモデルは未確立である。そこで、Adar1遺伝子にAGS型点変異(K948N)をノックイン(KI)した(AGS KI)マウスを樹立したところ、RNA編集の低下やIFN誘導遺伝子群(ISG)の発現上昇が認められた。このため、本研究では、本マウスを用いてAGS脳症の病態を明らかにすることを目的とした。1年目は、AGS KIマウスの表現型解析を実施し、白質脳症を示すこと、MDA5を欠損させるとISGレベルが正常化することを見出した。また、ADAR1には編集活性を持つ2つのisoform(p110とp150)が存在するが、このうちp150 isoformにおけるK948N変異のみがMDA5の活性化を引き起こすことを突き止めた。2年目は、p150選択的編集部位を網羅的に解析し、その中から、K948N変異によって著しく編集率が低下する部位を特定した。そこで3年目は、これらの編集部位を含む2本鎖RNA形成領域をクローニングし、ADAR1を含む全てのRNA編集酵素を欠損させた細胞株に導入し、ISGの上昇が認められるか検証した。しかし現時点では、MDA5活性化基質は特定できておらず、今後は候補基質をさらに増やして検討する予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 ページ: 104840~104840
10.1016/j.jbc.2023.104840
臨床免疫・アレルギー科
巻: 第80巻第5号 ページ: 599
巻: 第80巻第4号 ページ: 427