二次免疫応答において、記憶ヘルパーT細胞の動態や機能、役割は不明な点が多い。研究代表者は、全身性の免疫応答では、記憶ヘルパーT細胞が主に骨髄に、また一部は脾臓に維持され、末梢血やリンパ節など他組織には維持されていないことを示してきた。しかし、記憶ヘルパーT細胞の特異的マーカーが同定されていないことや、骨髄と脾臓の記憶ヘルパーT細胞を区別できないことなどで研究が進まずにいた。研究代表者は、骨髄記憶ヘルパーT細胞はインテグリンα2やその下流の接着斑キナーゼ (FAK) 依存的に、また脾臓記憶ヘルパーT細胞はIL-7依存的に維持されていることを明らかにした。これにより、各シグナルを単独または同時に阻害することによって、各組織の、またすべての記憶ヘルパーT細胞を特異的に除去することが可能になり、各記憶ヘルパーT細胞の動態や機能、役割を解析できるようになった。本研究では、各組織の記憶ヘルパーT細胞を血清学的かつ遺伝学的に除去し、各々の動態や機能、役割を明らかにすることを目的に研究を行った。その結果、二次応答時には、骨髄記憶ヘルパーT細胞が4時間以内にCD40Lなどの活性化マーカーかつ機能分子を発現するのに対して、脾臓記憶ヘルパーT細胞は24時間後まで活性化は見られなかった。さらに骨髄から早期に末梢への遊走も見られたと同時に、骨髄でもB細胞との相互作用が見られ、骨髄記憶ヘルパーT細胞が主に強く二次応答に働いていることが分かった。抗体による除去実験では二次応答前の時点で各細胞の減少が半分程度であったため、二次応答時の細胞数を解析したが有意な差が得られず、現在交配中のコンディショナル欠損マウスで解析中である。
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