研究課題
PAタグ融合リコンビナントマウスMASP-3(rmMASP-3-PA)を活性化型MASP-3に変換する酵素をマウス血清から単離することを目的として、抗PAタグ抗体ビーズを用いた共免疫沈降法を行った。目的とする血清中の酵素とrmMASP-3-PAとの酵素ー基質複合体は瞬時に解離するため、混合反応時にSH基クロスリンカーであるdithiobis(succinimidyl propionate)(DSP)を加えることで、酵素ー基質複合体としての単離を試みた。その結果、rmMASP-3-PAと血清の両者を混合したサンプルに特異的な酵素が数種単離された。これらの候補の中から1つの分子に着目し、既存のノックアウトマウスの導入を完了した。現在、同マウスの血清中におけるMASP-3の活性化状態の検討、補体第二経路の活性化能の検討を進めている。合わせて、MASP-3を活性化する血清中の酵素の新たな候補の探索を続けている。また、MASP-3と同一遺伝子にコードされるMASP-1はレクチン経路の活性化を担う酵素であり、活性化型に変換するためにレクチン経路の認識分子との複合体形成を必要とする。MASP-3はレクチン経路の認識分子との結合部位においてMASP-1と完全に相同であるため同様に複合体を形成するが、その意義は不明である。本研究では主にMASP-3の活性化に焦点を当てたその複合体形成の意義を明らかにするために、複合体形成に必須とされるアミノ酸を変異させた変異型rmMASP-3-PAを作製した。作製した変異型rmMASP-3-PAは、血清中のレクチン経路認識分子との複合体形成能をほぼ完全に失うことを、実験にて明らかにした。今後、MASP-3の活性化に主に焦点を置き、その複合体形成の意義についても明らかにしていく。
2: おおむね順調に進展している
rmMASP-3-PAとの複合体分離の実験においては相当に困難を極めたが、候補となる分子をピックアップすることができた。候補が得られるかどうかという点は、本研究を進める上で最もネックとなる部分である。今後も候補の探索を引き続き実施するが、既に候補を同定してその関与を明らかにする実験に取り掛かることができており、順調に進行していると考えている。
rmMASP-3-PAと複合体を形成する血清中の酵素の1つに着目し、ノックアウトマウスの血清中におけるMASP-3の活性化状態ならびに第二経路の活性化能調べる。第二経路の活性化能については、D因子、B因子の活性化状態の変化、C3分子のWestern blot、抑制性のセリンプロテアーゼであるI因子の活性化状態の検討など、あらゆるステップにおいてその第二経路における役割を調べる。加えて、血清中でのMASP-3活性化はセリンプロテアーゼ阻害剤によって抑制されることが判明しているため、セリンプロテアーゼ阻害剤を投与してin vivoでのMASP-3活性化の抑制が起こるかを合わせて調べる予定である。また、MASP-3がレクチン経路の認識分子と複合体を形成する意義について、野生型および変異型rmMASP-3-PAを血清と混合して、またマウスに投与して、in vitro、in vivo両方の観点でMASP-3の活性化への役割について明らかにしていく。
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Ophthalmology Science
巻: In press ページ: -
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 8464
10.1038/s41598-021-87340-6