研究課題/領域番号 |
21K07085
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
林崎 浩史 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (50779907)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NKT細胞 / ワクチン / 肺炎球菌 |
研究実績の概要 |
近年、我々は糖脂質をアジュバントとした新規肺炎球菌ワクチンを樹立した。糖脂質アジュバントは生体のナチュラルキラーT(NKT)細胞を介した強力な免疫賦活作用を誘導する。当該ワクチンの最大の特徴は、従来のアジュバント含有ワクチンと比較して非常に長期に渡って抗原特異的抗体産生を維持することであり、当該ワクチンによって誘導される濾胞性ヘルパーNKT(NKTFH)細胞がその作用基盤となることがわかっている。しかし、NKTFH細胞がどのようにして誘導されるのかは明らかになっておらず、本研究ではその発生機序を明らかにすることを目的とする。 令和2年度は、申請書の実験計画に沿ってNKTFH細胞の誘導に関与する細胞の探索を実施した。組織染色の結果より、核が分葉しているGr-1陽性細胞とNKT細胞の共局在が多く認められ、好中球が責任細胞と考えられた。しかし、マクロファージや単球の可能性を否定する目的で、クロドロン酸リポソーム投与により両者の細胞を除去した上でNKTFH細胞誘導の有無を解析した。結果、Gr-1抗体投与時とは異なり、NKTFH細胞の誘導障害が認められなかったことから、NKTFH細胞誘導に関与する責任細胞はマクロファージや単球ではなく、好中球である可能性が示唆された。次いで、ワクチン接種後の好中球の細胞動態を継時的に解析したところ、接種後3日目に脾臓へと多数動員されることが明らかとなった。また、脾臓常在性好中球と骨髄由来の動員好中球のどちらがNKTFH細胞誘導に関与するかGr-1抗体投与の時期を変えて誘導能を解析したところ、脾臓常在性好中球がNKTFH細胞誘導に重要であることがわかった。現在、NKTFH細胞誘導に関与する機能因子同定の為、脾臓常在性好中球のRNAシークエンス解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NKTFH細胞の発生機序に関与する細胞がGr-1陽性の好中球である可能性を明らかにし、さらに時期特異的Gr-1細胞欠失により脾臓常在性の好中球がNKTFH細胞誘導の責任細胞であることを明らかにした。現在、機能因子同定の為のRNAシークエンス解析中であり、申請書の計画通り順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
RNAシークエンス解析はワクチン接種後の継時的な単離好中球を対象としており、細胞除去の影響が最も大きいワクチン接種1日後の変化を中心に機能分子を探索する。得られた候補分子に対する中和抗体をワクチン接種後に投与することで、Gr-1抗体投与時と同等の誘導阻害活性があるか解析する。阻害実験により機能分子が同定できれば、欠損マウスの入手ないしは樹立へと進める。また、並行して今後の解析に有用なNKT細胞のCRISPR-Cas9システムの系を樹立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付申請時に旅費を計上したが、多くの学会がWeb開催となり、予定していた旅費の支出がなかった。また、研究補助員への人件費・謝金を予算に計上したが、本年度は支出の必要がなかった。申請研究も順調に進んでおり、次年度使用額へ当て消耗品等の購入支出を計画している。
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