研究代表者らの樹立した新規肺炎球菌ワクチンはNKT細胞の活性化を介して強力な抗体産生応答を誘導する。NKT細胞がエフェクターサブセットである濾胞性ヘルパーNKT(NKTFH)細胞へと分化することが当該ワクチンの作用基盤となっているが、どのような細胞や因子がNKTFH細胞への分化誘導に寄与しているかは明らかになっておらず、本研究ではその作用機序を明らかにすることを目的としている。 これまでの研究成果により、脾臓に局在するGr-1陽性細胞がこの分化誘導に必要不可欠であり、また、ワクチン投与に伴い、インターロイキン-27(IL-27)を特異的に産生していることがわかった。ワクチン投与マウスへのIL-27中和抗体投与はNKTFH細胞への分化誘導を障害することから、Gr-1陽性細胞由来のIL-27が分化誘導因子であることが明らかとなった。しかし、IL-27がNKT細胞へどのような作用を示すかについては不明であった。今年度はワクチン投与マウスにIL-27中和抗体およびアイソタイプを投与し、3日後の脾臓NKT細胞を単離した後にRNAシークエンス解析を実施した。RNAシークエンス解析結果により、IL-27中和によりNKT細胞はミトコンドリア代謝関連遺伝子群の発現が低下していることがわかった。実際にIL-27中和抗体を投与した際、脾臓NKT細胞のミトコンドリアサイズ、膜電位、ROS産生は有意に低下しており、また、in vitro培養系にてIL-27添加条件下で刺激したNKT細胞ではこれらの代謝パラメーターが一様に上昇していた。過去の報告よりNKT細胞のエネルギー代謝は酸化的リン酸化(OXPHOS)に依存していることが示されていることから、エフェクター分化に必要なエネルギー需要に応答するため、IL-27はNKT細胞のミトコンドリア代謝を制御していることが示唆された。
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