研究課題/領域番号 |
21K07086
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
水田 龍信 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 教授 (50297628)
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研究分担者 |
北村 大介 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 教授 (70204914)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DNase1L3 / DNase γ / DNase1 / Histone H1 / 相分離 / ヘテロクロマチン |
研究実績の概要 |
DNase γ (別名DNase1L3)はDNase1ファミリーに属するDNA分解酵素で、血流中に存在している。漏出したクロマチンはまずDNase γで大きく切断され、次にDNase1で細かく裁断されるが、その時間的・空間的使い分けのメカニズムは不明であった。最近、「相分離」という概念が知られるようになり、高度に折り畳まれたクロマチンも、その構成タンパク質であるHistone H1の相分離によって形成された特殊な構造体、すなわち相分離液滴であることが分かってきた。Histone H1には、相分離タンパク質に特有のアミノ酸配列があるが、DNase γにも類似の配列がある。そこで、DNase γはDNase1に比べ、相分離クロマチンへの親和性が高く、これがDNase γとDNase1の使い分けに反映されているという仮説を立てた。本研究では、この仮説の検証と、作成中の遺伝子改変マウスを用いて、DNase γとDNase1、そしてアポトーシス特異的なDNA分解酵素CADの生体内での役割の解明を目指している。2021年度はCAD、DNase γ遺伝子の二重欠損マウスとCAD、DNase γ、DNase 1遺伝子の三重欠損マウスを用い肝細胞ネクローシス誘導時のDNase 1の機能を検討した。その結果、DNase 1はDNase γの機能の一部を補填するものの、完全には代替できないことが確認された。また、これらの三遺伝子を欠損してもTUNEL陽性の細胞が見られたことから、他のDNA切断酵素の存在が明らかになった。さらに、C末を欠損したDNase γの変異体は、ヘテロクロマチンへの局在が抑制される事を見出している。ヘテロクロマチンは典型的な相分離液滴であると考えられるので、このC末端がDNase γの相分離クロマチンへの親和性を規定しているものと予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相分離クロマチンへの親和性の差がDNase γとDNase1の役割の違いにつながるという結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
DNase γはDNase 1ファミリーに属し、アミノ酸構造はきわめて類似している。唯一の違いはC末端で、DNase γは約30アミノ酸長く、そこには核移行シグナル様の配列もある。コンピュータ解析から、このC末端が相分離を起こすタンパク質に特有のLow complexity domain (LCD)であることを見出している。そこでまず、このドメインと蛍光タンパク質を融合させたものを細胞に発現させ、局在を観察する。予想では、核内の相分離液滴であるヘテロクロマチンへの集積が起こると考えられる。また蛍光標識したペプチドを合成し、これを裸核にかけ、ヘテロクロマチンへのアクセスの可能性を検討する。さらに、遺伝子改変マウスを用いた実験では、各種細胞死誘導後の血液中のDNase 1、DNase γ活性と細胞死症状の進行の相関を検討する。また、好中球活性化によるNET形成を誘導し、血栓の有無、がん転移への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
作成中の論文投稿費に充当する予定であったが、論文の作成が遅れていることが原因。論文完成後速やかに投稿し、投稿料として支出する。
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