研究課題/領域番号 |
21K07091
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊東 剛 東京大学, 医科学研究所, 助教 (20733075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小細胞肺がん / CADM1 |
研究実績の概要 |
小細胞肺がん (small-cell lung cancer: SCLC) は肺がんの約15%を占め、早期から全身に転移をきたす難治がんの代表である。細胞接着分子 Cell adhesion molecule 1 (CADM1) はSCLCに高発現し、SCLC細胞株のヌードマウス皮下における腫瘍原性を促進することをこれまでに報告しており、本研究はCADM1がSCLCの増殖、転移を促進する分子機構を明らかにすることを目的として行う。本年度はまず、CADM1がSCLCの腫瘍増殖を促進する分子経路の阻害剤を用いたスクリーニングを行った。170種類の化合物ライブラリーから、CADM1の導入によるSBC5細胞の足場非依存的増殖の亢進を阻害する化合物を絞り込み、分子X経路の関与を示唆する結果を得た。次に、Rb1/Trp53 floxマウス (RPマウス) の肺へCreリコンビナーゼを発現するアデノウイルスを投与するSCLC発がんモデルを用いて、Rb1/Trp53/Cadm1 floxマウス (RPCマウス) に発生するSCLCについて検討した。RPCマウスはRPマウスよりも長期間生存し、瀕死時の解剖において転移が少ない傾向にあった。したがって、CADM1がSCLCの発生及び進展を促進することを示唆する結果がマウスモデルにおいても得られ、解析を継続している。また、SCLCと大細胞神経内分泌がん (LCNEC) のサブタイプ分類に関する総説を共同第一著者として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CADM1がSCLCの増殖を促進する分子経路を化合物ライブラリースクリーニングにより絞り込むことができた。またSCLC発がんマウスモデルにおいて、CADM1のノックアウトがSCLCの発生及び進展を抑制することを示唆する結果が得られ、当初の計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
CADM1がSCLCの増殖を促進する分子経路の候補が得られたことから、CADM1が当該経路をどのように制御するか、レポーターアッセイや免疫沈降法などの手法により検討する。またCADM1を発現するSCLC細胞のヌードマウス皮下腫瘍に対し、阻害剤を投与し治療効果を検証する。SCLC発がんモデルマウスに関しては、解析を継続し、マウスの生存期間、病理学的悪制度、転移について評価する。さらに腫瘍組織のRNA-seq解析を行い遺伝子発現を比較することで、CADM1の欠如により発現変動する遺伝子群の特徴を明らかにする。
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