研究課題/領域番号 |
21K07092
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鴫 成実 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00396780)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プロテアーゼ / がん / 発現制御 / 高次構造 |
研究実績の概要 |
当研究室では消化管がん生検検体を用いた網羅的遺伝子発現解析を行っている。本研究では、がん部において非がん部より発現が上昇していた遺伝子群の中で、特に細胞外セリンプロテアーゼKallikrein-related peptidase (KLK)に注目した。プロテアーゼは、その標的タンパク質のプロセシングにより様々な生命現象に関与しており、多くのがんで発現の変動が報告されている。そこで消化管がんにおいてKLKの発現上昇がどのようながん悪性化と関連があるのかを調べた。 まず胃がん、及び大腸がん由来細胞株の中でKLKが発現していない細胞株を選定し、レトロウイルスベクターによりKLKを安定的に強制発現させた株を作製した。増殖能の変化を調べるため、これらの株を用いてAlamar Blue アッセイを行ったところ、KLKの発現による大きな変化は見られなかった。次に浸潤能を調べるため、ゼラチンをディッシュにコーティングし、これらの細胞株を培養し、蛍光標識したPhalloidinを用いてアクチンを染色したところ、一部の細胞株においてKLKの発現によりinvadopodiaが形成されている様子が観察された。このことからKLKの発現により浸潤が促進される可能性が示唆された。 KLKがどのような機構により、がん部で発現が上昇するのか、について明らかにするため、まず転写制御領域の探索を行った。具体的にはKLKの転写開始点から上流域を様々な長さでクローニングし、いくつかの細胞株を用いてルシフェラーゼレポーターアッセイを行い、候補領域を特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KLK安定発現株の構築により、KLKの発現上昇が、増殖には大きく影響せず、浸潤を促進させることが示唆され、消化管がんにおけるKLKの作用機序の一部を明らかにできた。 またKLKの発現制御領域についても候補となる部位を特定できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に基づき、がん悪性化機構については、引き続きKLKが及ぼす影響について細胞レベルでの詳細な解析を進めるとともに、KLKが作用する分子の同定を行い、分子レベルでの作用機構の解明を目指す。発現制御機構については、転写制御領域へ結合する分子の同定、薬剤添加による発現変化等から解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、物品の在庫不足、納期の大幅遅延が発生し、予定していた物品の購入ができなかったため。次年度、予定していた物品の購入にあてる予定である。
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