研究課題
当初予定されていたEtsファミリー転写因子の欠損マウスについては胎生期における脈管構造の変化について解析を進めている。これに加えて、リンパ管内皮細胞における役割を見出しつつある、別のEtsファミリー転写因子についても欠損マウスの作出を進めている。細胞レベルにおける解析では、このEtsファミリー転写因子の遺伝子発現を抑制させた細胞とコントロールとなる細胞を採取してRNA sequenceを行い、両者間の遺伝子発現の違いから内皮間葉移行(EndoMT)を引き起こしている(原因となっている)候補遺伝子の絞り込みを試みている。一方で血管の多い組織として肺の機能や性質に影響が起こることが予想されるので、肺の病態モデルを誘導し、その病態におけるEndoMTの役割についての解析も進めている。また、研究計画で予定していたEndoMTを検出するレポーターマウスについては、将来的な研究の発展を見込んで、より有用なレポーターマウスとしてEndoMTを検出するだけでなくEndoMTを起こした細胞を除去できるシステムを設計し、現在システムの構築を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初予定されていたEtsファミリー転写因子の欠損マウスの解析そのものは遅れているが、ほかのEtsファミリー転写因子の欠損マウスの作出やレポーターマウスの作出を進めていることから研究全体としてはほどほどに進展していると考えられる。
これまでは主にマウスにおいてTEK/TIE2のプロモーターの制御下で働くCreリコンビナーゼの組換え機能による遺伝子の組織特異的(今回の場合は、血管やリンパ管に特異的)な欠損を進めてきているが、がんを含む病態モデルにおいてはVE-cadherinのプロモーターの制御下で、時期特異的にCreリコンビナーゼが働く(リコンビナーゼの機能が誘導できる)システムに切り替える必要があり、本年度はこれの作出を行い、がんや肺の病態を用いた解析を進める予定である。より具体的には、病理組織からの内皮細胞の単離を行い、その性状を主にEndoMTの観点から解析する。また、RNA sequenceを行ったデータを用いてEndoMTを引き起こしている候補遺伝子の絞り込みおよび細胞を用いたメカニズム解析も並行して進めていく。
当初、前倒しして使用するはずであったが、実際には予定通りには進まなかったため使い切れなかった。令和5年度の予算では、研究計画を実施して使用する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Nature Communiactions
巻: 13 ページ: 5239
10.1038/s41467-022-32848-2
Particle Fibre and Toxicology
巻: 19 ページ: -
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新潟医学会雑誌
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