研究課題
Etsファミリー転写因子の一つが炎症に関連するサイトカインの発現を負に調節していることを見出しており、この炎症性サイトカインの作用機序から内皮間葉移行を抑制する役割を持つことが示唆されている。昨年度より転写因子の生体における役割を検討するために、内皮細胞特異的な欠損マウスの作出を行ってきた。既報では、この遺伝子の欠損では血管の形成に大きな異常がないことが示されており、仮に異常があるとしても特定の臓器や組織だけに起きる特異的な異常が予想された。そこで、片アレルについては全身性で欠損させて、もう片アレルについてfloxアレルとして脈管内皮特異的な欠損をTEK-creマウスを用いて検討した。マウス胎仔期15.5日目では、出血性の脈管の異常が認められた。これらについて、現在詳細な解析を進めている。並行して、がん細胞の移植モデルを用いた解析を進めているところであるが、まだ十分な解析データを取得するところまで到達できなかった。共同研究を進めているグループの方では、我々のグループが樹立した内皮間葉移行のレポーター細胞を用いて内皮細胞の性質変化の遷移状態を可視化することに成功した。このうち、CD40という分子が部分的な内皮間葉移行(partial EndoMT)で一過的に上昇しており、完全な内皮間葉移行 (full EndoMT)では抑制されていること、full EndoMTに対しては抑制的に働くことを突き止めた。細胞レベルの解析では、siRNAでノックダウンした血管内皮細胞についてのRNAシークエンス解析により血管異常の原因を説明できるEtsファミリー転写因子の作用点となる分子の同定を試みている。将来的な研究の発展を見込んで、より有用なレポーターマウスとしてEndoMTを検出するだけでなくEndoMTを起こした細胞を除去できるシステムを設計し、現在システムの構築を進めている。
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