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2022 年度 実施状況報告書

肥満誘導性がんにおけるオルガネラ相互作用の解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K07102
研究機関熊本大学

研究代表者

森田 斉弘  熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 客員准教授 (50549475)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードmRNA翻訳 / mTORC1 / 代謝リプログラミング
研究実績の概要

本研究課題では、過剰な栄養によって引き起こされる肥満誘導性がんにおけるがん発症・進展の分子機構の一端を解明することを目的としている。これまでに申請者は、栄養素のセンサーであるmTORC1シグナル伝達経路が、タンパク質合成およびミトコンドリアの分裂・活性化を同時に促進し、がん細胞のエネルギーバランス維持に重要な役割を果たしていることを証明してきた。しかしながら、個体がんにおいてもこのようなmTORC1シグナル伝達経路によるエネルギー恒常性維持機構が働いているのかは不明であった。2022年度は、昨年度樹立した様々な遺伝子欠損マウスの解析を行った。がんモデルマウスを用いてポリソームプロファイリングを行い、抵抗性に関わるmRNA群を単離しRNA-seqによる解析を行った。データ解析に関しては、カロリンスカ研究所の共同研究グループにRNA-seqデータの解析を依頼した。結果、ERに取り込まれるようなタンパク質をコードするmRNA群の翻訳活性が、非がん部に比べてがん部で活性化していた。さらに、その他の共同研究者ともオンラインミーティング行い議論を進めており、学会等においても発表を行い議論を進めている。本研究課題の遂行は、これまでのモデルと全く異なるがん組織における「エネルギーバランス維持のための疾患オルガネラ相互作用の動的変化」という新たな概念を生み出し、肥満にともなうがんの発症機構の一端を明らかにできると考えている。さらに、2022年4月にはmRNA制御による新たな肥満制御機構に関する論文を、国際的にも評価されているCell Metabolism誌に、最終責任著者として発表することができた。以上のように本研究課題の進捗状況は、当初の計画以上に進展している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題では、過剰な栄養によって引き起こされる肥満誘導性がんにおけるはがん発症・進展の分子機構を明らかにしたいと考えている。2022年度においては当初予定していたように、様々な遺伝子欠損マウスを集め、がんマウスモデルの解析を進めることができた。これらのがんからトランスレイトーム解析によって翻訳制御を受けているRNAを単離することができ、予定よりも早くRNA-seqを進めることができた。現在は、共同研究先であるLarsson博士とともにRNA-seqの解析について議論を進めている。次年度においては、これらのデータをもとに分子メカニズムの一端を明らかにできると考えている。さらに、以前の論文の結果をもとにmRNA分解酵素が肥満を制御する新たな分子機構を明らかにすることができた。これらの結果は2022年4月号のCell Metabolism誌というトップジャーナルに最終責任著者として発表することができた。このことは当初の期待以上の結果であり、予想以上に研究計画が進展していることを証明している。現在準備中の論文も2023年度中に発表できると考えられ、さらに研究計画を推し進めていきたいと考えている。

今後の研究の推進方策

研究計画は、予定していた以上に進んでおり、最終責任著者としてトップジャーナルに論文も発表することができている。今後は予定していたように、トランスレイトーム解析を推し進める予定である。さらに、免疫染色法や免疫ブロット法を遺伝子改変技術と組み合わせることにより、肥満誘導性がん発症の分子メカニズムを詳細に明らかにできると期待している。これらの結果の一部は既に論文として投稿されており、次年度中に発表できると考えている。さらに、共同研究者との議論を推し進め、抗がん剤への抵抗性を減弱させる薬剤の併用療法を探索し、mTORC1阻害薬の抗がん作用を増強する新たな療法の可能性を示せればと考えている。

次年度使用額が生じた理由

パンデミックにより、予定していた学会がキャンセルとなったため。また、物品費のインフレーションにより、予定していた物品の購入ができなかったため。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] McGill University/Queen's University(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      McGill University/Queen's University
  • [国際共同研究] Karolinska Institute(スウェーデン)

    • 国名
      スウェーデン
    • 外国機関名
      Karolinska Institute
  • [国際共同研究] University of Texas Health Science/University of Texas Southwestern/Massachusetts Institute of Technology(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Texas Health Science/University of Texas Southwestern/Massachusetts Institute of Technology
    • 他の機関数
      3
  • [雑誌論文] Age‐dependent loss of hepatic SIRT1 enhances NLRP3 inflammasome signaling and impairs capacity for liver fibrosis resolution2023

    • 著者名/発表者名
      Adjei‐Mosi Jennifer、Sun Qing、Smithson Steven Blake、Shealy Gavyn Lee、Amerineni Krupa Dhruvitha、Liang Zerong、Chen Hanqing、Wang Mei、Ping Qinggong、Han Jingyan、Morita Masahiro、Kamat Amrita、Musi Nicolas、Zang Mengwei
    • 雑誌名

      Aging Cell

      巻: Online ページ: 13811

    • DOI

      10.1111/acel.13811

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Targeting hepatic serine-arginine protein kinase 2 ameliorates alcohol-associated liver disease by alternative splicing control of lipogenesis2023

    • 著者名/発表者名
      Li Guannan、Chen Hanqing、Shen Feng、Smithson Steven Blake、Shealy Gavyn Lee、Ping Qinggong、Liang Zerong、Han Jingyan、Adams Andrew C.、Li Yu、Feng Dechun、Gao Bin、Morita Masahiro、Han Xianlin、Huang Tim H.、Musi Nicolas、Zang Mengwei
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: Publish Ahead of Print ページ: 1097

    • DOI

      10.1097/HEP.0000000000000433

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Deadenylase-dependent mRNA decay of GDF15 and FGF21 orchestrates food intake and energy expenditure2022

    • 著者名/発表者名
      Katsumura Sakie、Siddiqui Nadeem、Goldsmith Michael Rock、Cheah Jaime H.、Fujikawa Teppei、Minegishi Genki、Yamagata Atsushi、Yabuki Yukako、Kobayashi Kaoru、Shirouzu Mikako、Inagaki Takeshi、Huang Tim H.-M.、Musi Nicolas、Topisirovic Ivan、Larsson Ola、Morita Masahiro
    • 雑誌名

      Cell Metabolism

      巻: 34 ページ: 564~580.e8

    • DOI

      10.1016/j.cmet.2022.03.005

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Orchestrating inter-organ communication and treating metabolic syndrome by targeting mRNA decay of hepatokines2022

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Morita
    • 学会等名
      Waseda University
    • 招待講演
  • [学会発表] mRNA decay of hepatokines orchestrates inter-organ communication to regulate food intake and energy expenditure2022

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Morita
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] mRNA decay of hepatokines orchestrates inter-organ communication to regulate food intake and energy expenditure2022

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Morita
    • 学会等名
      OIST
    • 招待講演
  • [備考]

    • URL

      https://scholar.google.co.jp/citations?user=yFXA91UAAAAJ&hl=ja

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公開日: 2023-12-25  

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