研究課題/領域番号 |
21K07106
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
平本 正樹 東京医科大学, 医学部, 教授 (70297828)
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研究分担者 |
川原 玄理 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40743331)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん / 上皮間葉転換 / チロシンキナーゼ阻害薬 / GAK / アクチン細胞骨格 |
研究実績の概要 |
がんの克服には、再発・転移の制御が重要である。転移の始まりは局所からの浸潤であり、浸潤能の獲得には上皮間葉転換(EMT)が鍵となる。さらにEMTは分子標的薬に対する薬剤耐性獲得や、肺線維症などの薬剤性肺障害にも関わると考えられている。本研究者らは、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKIs)の副次的標的分子cyclin G associated kinase (GAK)の欠損によって、アクチン細胞骨格のダイナミクスが大きく変化し、EMT様変化が誘導されることを見出した。本研究では、「EMTにおけるGAKの分子機能と生理作用の解明」と「GAKまたはその関連因子を分子標的としたEMT抑制法の開発」を目的として、解析を遂行する。 令和3年度には、1)GAK欠損による上皮系マーカー遺伝子の発現低下と、間葉系マーカー遺伝子の発現上昇を明らかにした。2)GAK欠損によって、細胞遊走能と細胞浸潤能が亢進することを明らかにした。3)GAKと相互作用するタンパク質(複合体)について解析を行った。 令和4年度には、GAK欠損によるEMT誘導の分子メカニズム解明を目的として、EMTの特徴であるストレスファイバー形成および細胞運動能亢進におけるGAKの分子機能について解析を行った。その結果、1)ミオシン脱リン酸化酵素を介したアクトミオシン制御において、Rho-ROCK経路との拮抗的作用が明らかとなりつつある。2)GAKの新規リン酸化基質が複数同定され、アクトミオシン制御との関わりを示唆する因子も得られている。また、モデル動物を用いた検証として、3)ゼブラフィッシュを用いた転移アッセイを行い、GAK欠損による移植がん細胞の転移能亢進を示唆するデータが得られており、今後さらに検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GAK欠損によるEMT誘導に関わる分子メカニズムの解析は順調に進められている。GAK結合タンパク質およびGAKのリン酸化基質については、EMT抑制法の開発につながる分子標的の絞り込みには至っていないが、同定・解析が進んでいる。また、モデル動物を用いた検証解析については、ゼブラフィッシュを用いた転移アッセイを開始し、マウスでの検証解析に用いる細胞の準備も整えられた。
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今後の研究の推進方策 |
GAKの分子機能と生理作用については、引き続き解析を進める。GAK結合タンパク質およびGAKのリン酸化基質については、EMTに関連する既知の分子機能情報などから優先順位を決め、EMT抑制法の開発につながる分子標的を絞り込む。また、令和4年度に開始したゼブラフィッシュでの検証を推進するとともに、マウスを用いた検証解析にも着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要試薬をキャンペーン特価で購入できたため、今年度予算に少し残額が生じた。次年度に計画している解析をより詳細に行うために有効活用する。
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