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2021 年度 実施状況報告書

ネクロプトーシス実行分子MLKLの肝癌細胞増殖における細胞死非依存的機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K07115
研究機関旭川医科大学

研究代表者

人見 淳一  旭川医科大学, 医学部, 助教 (40568664)

研究分担者 山岸 覚  浜松医科大学, 医学部, 准教授 (40372362)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2023-03-31
キーワードネクロプトーシス / MLKL / 肝がん細胞 / 分裂 / 細胞死非依存的
研究実績の概要

本研究では、新たなプログラム型細胞死であるネクロプトーシスの実行分子であるMLKLの細胞死非依存的機能として、細胞分裂期の制御における新たな役割を見出したので、その新規機能に着目した解析を行う。細胞分裂の制御は様々な分子が複合体を形成することによって行われていることから、MLKLが分裂期制御に関わる分子と複合体を形成することで、その機能を発揮すると考え、本年度はMLKLと結合する分子の同定を試みた。
結果として、分裂期チェックポイント、特に分裂期中期から次の終期へと進行する際に重要となるチェックポイント分子群の一つである分子Xと結合する可能性を見出した。ヒト肝がん細胞株を用いた検討から、内因性のMLKLと分子Xが結合していることを、免疫沈降法や免疫蛍光染色の手法により確認した。この結合が実際に細胞分裂の進行にどのように影響を与えるか検討を行うため、ヒト肝がん培養細胞株において、MLKL遺伝子発現をsiRNAを用いてノックダウンした後、細胞分裂期チェックポイントをオンにする刺激としてノコダゾールを投与し、その応答を検討した。
その結果、MLKLの遺伝子ノックダウンによってチェックポイントが正常に働かなくなることを分裂期のマーカー分子群に対するウエスタンブロットの手法によって見出した。さらに、MLKLと分子Xの結合様式を検討するため、それぞれの分子の発現ベクターを構築した。
また、上述のMLKLの新規機能の制御において、MLKLのリン酸化が関与している可能性を見出している。そこで、このリン酸化を指標にして、分裂期における新たな機能の解析するために、リン酸化抗体を作成することを計画しており、そのための具体的なリン酸化部位の特定を質量分析解析により行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

プログラム型細胞死ネクロプトーシスの実行分子であるMLKLの肝がん細胞分裂期における新たな細胞死非依存的機能の解明のために、MLKLと結合する分子の同定を試みた。その結果、細胞分裂期チェックポイントを制御することが知られている分子Xを同定した。MLKLが分子Xと内因性に結合することや染色体近傍において共局在することを免疫沈降や免疫蛍光染色により明らかにした。
さらに、このMLKLの新規機能はMLKLのリン酸化を介して発揮される可能性を見出しており、その具体的なリン酸化部位の特定とリン酸化抗体作成に取り組んでいる。リン酸化抗体の作成を開始することを予定していたが、質量分析による部位の同定が完了していないため、予定していた計画より遅れが出ている。
また、このMLKLの細胞死非依存的な新規機能を生体内において解析するため、MLKL遺伝子の発現を全身性に欠損させたノックアウトマウスの作製および購入をする計画であるが、新型コロナウイルスの影響なども含めて、マウスの入手に遅れが出ている。MLKLと結合する分子の候補を同定する計画は、おおむね良好な進捗状況ではあるが、更なる詳細な解析のために有用となるMLKLノックアウトマウスの入手が進んでいないこともあり、やや遅れた進捗となっている。

今後の研究の推進方策

現在、遅れの出ているMLKLノックアウトマウスに関して、作製、購入により入手を試みるとともに、すでにマウスを有している日本国内の研究者への分与の依頼ができるかどうかの検討を行い、本研究課題の遂行を進める予定でいる。
MLKLリン酸化部位の同定に関して、質量分析による検出は当初予定していた条件で検出できなかったため、進捗に遅れが出ているので、検出条件や解析に用いる試料の最適化を行うことで改善がみられるか検討を行う予定である。
また、MLKLは本研究で着目している肝臓だけでなく、生体内に広く分布した発現パターンを有しており、病態との関りにおいても、脳梗塞後の傷害など脳における病態に関与することが報告されている。さらに、肝臓ー脳軸(liver-brain axis)によって、肝臓の線維化など肝臓の病態が脳機能に影響を与える可能性が知られていることから、本研究で着目しているMLKLの細胞死非依存的な新規機能が(つまり分裂期における分子Xとの相互作用やMLKLリン酸化を介したチェックポイント制御機構)肝臓から脳などの他臓器へ与える影響についても調べることで、本研究で見出している現象の普遍的な重要性について検討を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度の実施を予定していた、MLKLノックアウトマウスの作製および購入をする計画がコロナウイルス感染拡大などの理由で、実施することが出来なかったため、次年度に持ち越し、マウスを入手する予定でいるため、次年度の使用を予定している。MLKLリン酸化抗体の作成に予定していた費用に関して、リン酸化部位の確定が完了していないため、部位確定後、次年度における使用を予定している。MLKL抗体、分子X抗体、そして新たに作成を予定しているMLKLリン酸化抗体を用いて、肝臓あるいは脳を中心とした細胞生物学的、組織学的解析を行う計画のため、次年度の使用を予定している。

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公開日: 2022-12-28  

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