研究課題/領域番号 |
21K07116
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森藤 可南子 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (90867524)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 腫瘍溶解性ウイルス / 1型ヘルパーT細胞(Th1細胞) / 癌微小環境 |
研究実績の概要 |
近年、癌治療における癌微小環境内の免疫反応の重要性が注目されている。癌細胞を殺す機能を持つ免疫細胞としてキラーT 細胞は有名である。現在の研究では、癌微小環境へのキラーT細胞の集簇のみが注目され、その機能を長期持続させる1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)の研究は多くない。 腫瘍溶解性組換え麻疹ウイルスは、本研究室で開発中の新しい癌治療法でその受容体であるNectin-4陽性癌細胞を標的とする。私は、組換え麻疹ウイルス治療後の免疫反応を検討するため、Nectin-4を正常免疫保有マウス由来の癌細胞に導入し、評価モデルを作出した。本モデルを用いて、組換え麻疹ウイルス癌治療は、治療した癌微小環境にTh1細胞の迅速かつ顕著な集簇を引き起こすことを見出し、このTh1細胞の誘導のメカニズム、組み換え麻疹ウイルス癌治療効果への寄与を解明することを目的とした。 本研究の目的は、組換え麻疹ウイルス癌治療におけるTh1細胞のウイルス癌治療への効果および抗腫瘍免疫の長期持続への影響を明らかにすること、および癌微小環境におけるTh1細胞の誘導に関与する遺伝子の同定である。 2021年度は、ウイルス癌治療効果の高い癌細胞、低い癌細胞の2つのモデルを用いて、治療後の癌微小環境内の免疫細胞の変化を解析した。2つのモデルを用いた解析により、癌治療効果の低いモデルにおいて、組換え麻疹ウイルス癌治療によって誘導されるTh1細胞をはじめ、その他の免疫細胞の活性化の誘導が弱いことが明らかになった。また、Th1細胞を誘導する原因遺伝子同定のため、ウイルス感染認識、排除に関わる遺伝子群の発現解析を行った。2つの細胞間で発現に差があった4つの遺伝子を候補遺伝子とし、候補遺伝子欠損細胞または遺伝子導入細胞を樹立した。今度、これらの細胞を用いて組換え麻疹ウイルスのTh1細胞誘導能を正常免疫保有マウスを用いて検証していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の進捗として、組換え麻疹ウイルス癌治療の感受性の異なる2つのモデルを用いて解析で、in vivoにおいてTh1細胞の誘導に差が認められた点は本研究を進めていく上で非常に有意義な発見であった。この2つのモデルを用いて、Th1細胞の誘導のメカニズムの解明が可能であることを示唆している。また、2つの癌細胞間で発現の異なる遺伝子が4つも発見され、これらの遺伝子欠損細胞、遺伝子導入細胞が樹立された。これらの細胞の樹立は、組み替え麻疹ウイルス癌治療によるTh1細胞の誘導メカニズムの解明につながると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り順調に進んでいる。 2021年度は、培養細胞の樹立を中心に実験を行い、細胞の樹立は完了した。 2022年度は、動物実験を中心とし、研究を推進していく。すでに、組換え麻疹ウイルス癌治療の感受性の異なる2つのモデルの間に、Th1細胞の誘導に差があることが示されているので、遺伝子欠損、遺伝子導入癌細胞を用いて免疫細胞の反応を解析することで原因遺伝子の同定につながるはずである。 また、抗CD4抗体を用いたTh1細胞の組換え麻疹ウイルス癌治療の抗腫瘍効果への寄与の実験も進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、培養細胞を用いた実験が中心で動物実験が少なかったため次年度使用額が発生した。 2022年度は動物実験が増えるため、それに必要な動物購入費、飼育費、抗体購入費に使用する。
|