研究課題/領域番号 |
21K07117
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 逸平 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (80772376)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん / シグナル伝達 / リン酸化 / チロシンキナーゼ / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
申請者の研究グループはこれまでに核内タンパク質パラフィブロミンがチロシンリン酸化依存的に複数の発がんシグナル経路群を統合的に制御することを明らかにしてきた。しかしこれまでの研究は培養細胞を用いた分子、細胞の解析に焦点を当てており、パラフィブロミンが生物個体レベルの現象に果たす役割は不明のまま残されていた。そこで本研究では、パラフィブロミンのチロシンリン酸化を担う3つのPtk6ファミリーチロシンキナーゼ(Ptk6、Srms,、Frk)を同時に欠損させた遺伝子改変マウスをCRISPR/Casによるゲノム編集技術を用いて作製・解析することでパラフィブロミンチロシンリン酸化制御が生物個体レベルで担う生理的・病態生理的役割の解明を試みている。 上記の目的達成のため、令和3年度には、以下の研究成果を得た。 (1)Ptk6ファミリーチロシンキナーゼ多重欠損マウスを用いた腸管上皮オルガノイド解析から、Ptk6ファミリーキナーゼが腸管上皮幹細胞の試験管内培養に必須の役割を果たすことを明らかにした。(2)放射線誘導性腸障害実験から、高線量の放射線照射後に誘導される腸管上皮組織の再生にPtk6ファミリーキナーゼが必須であることを明らかにした。(3)次世代シークエンサーを用いたマイクロバイオーム解析を行い、多重欠損マウスの腸内細菌叢の構成を明らかにした。
以上の結果から、Ptk6ファミリーキナーゼは腸管上皮組織恒常性の維持に重要な役割を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管上皮再生にPtk6ファミリーキナーゼが重要な役割を果たすことを明らかにできたため。また、腸内細菌叢解析についても結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに観察されたマウスの表現型がどのような分子機構を介したものかを明らかにする。具体的には、RNAシーケンスなどの遺伝子発現の網羅的解析を行う。また、腸管上皮ー腸内細菌叢ー免疫系制御の相互作用についての解析も進めたい。
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