研究課題/領域番号 |
21K07126
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
前川 大志 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (10771917)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SPOP / DNA複製 / 前立腺癌細胞 / 角化細胞 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、前立腺癌細胞におけるSPOPのDNA複製ストレス解除機構の解明を進めた。その結果、SPOPの発現抑制時に前立腺癌細胞で見られるTDP1とTDP2のタンパク質レベルでの発現減少が、mRNAレベルでは無くタンパク質レベルでの制御を受けていることが分かった。現在、分解促進か、翻訳阻害によるものかを解明するため、プロテアソーム阻害剤やシクロへキシドミ処理などの実験を進めている。 前立腺癌細胞での解析と同時に、癌化する前の正常細胞におけるSPOPの機能解析を進めた。正常細胞として、不死化されたヒトの角化細胞であるHaCaT cellsを用いた。まず、HaCaT cellsにおけるSPOPの発現抑制系の構築を行なった。市販されいているsiRNAを用いてSPOPの発現抑制を行なったところ、2種類のsiRNAそれぞれにおいて、SPOPをmRNAレベル、タンパク質レベルの両方で80-90%の発現抑制効率を確認した。 次に、SPOP発現抑制下における角化細胞の表現型を確認した結果、アンドロゲン受容体陽性の前立腺癌細胞であるC4-2 cellsやLNCaP cellsで見られていたγH2AXの顕著な蓄積は一切見られなかった。これらの結果は、SPOPが角化細胞では前立腺癌細胞とは異なる作用点を有する事を強く示唆している。DNA複製ストレス解除における作用点の更なる解析を進めている。 SPOP依存的な細胞生理機能のメカニズム解析として、SPOP発現抑制下の脂質やタンパク質代謝の変動を質量分析により、解析を行なった。その結果、SPOP依存的な脂質及び、タンパク質の代謝変動を見出した。これらの代謝変動とDNA複製ストレス解除の関連の解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前立腺癌細胞でのSPOPの分子機構解析が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
角化細胞におけるSPOPの細胞機能を更に深化させるとともに、前立腺癌や他の癌細胞も同様の実験を行い、正常細胞と癌細胞とで作用点の比較を行う。特に、2021年度に見出したSPOPとタンパク質及び、脂質代謝変動の関連を遺伝学的に調べていく。SPOPの下流で機能されうる脂質代謝酵素の発現抑制や過剰発現によるDNA複製ストレス解除への影響、また、DNA複製ストレス発生時の脂質代謝を質量分析により解明する。 また、不死化角化細胞だけではなく、初代培養系の角化細胞や内皮細胞などの、真の正常細胞でも同様の解析を進めていく。マウス個体レベルでは、各臓器におけるSPOPの発現変動と脂質代謝変動の相関を質量分析を駆使して解析する。
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