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2021 年度 実施状況報告書

合成致死性を介したPRMT5に依存したHSP90を標的とした阻害剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K07128
研究機関宮崎大学

研究代表者

市川 朝永  宮崎大学, 医学部, 助教 (80586230)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードPRMT5 / HSP90 / がん
研究実績の概要

新規がん抑制遺伝子NDRG2はストレス応答に伴い活性化される各種情報伝達系に対して、脱リン酸化酵素PP2Aと複合体を形成し、調節因子を脱リン酸化してストレス誘導情報伝達系の沈静化を担っている。NDRG2発現低下は結合タンパク質群の高リン酸化を引き起こして細胞内情報伝達系の恒常的な活性化および異常を惹起し、がん発症進展に関わっていた。さらに、NDRG2発現低下に伴う高リン酸化PRMT5アルギニンメチル基転移酵素に依存したHSP90Aアルギニンメチル化修飾を見出した。HSP90Aアルギニンメチル化によるシャペロン活性亢進がクライアントタンパク質を安定化させ細胞増殖維持と繋がっていた。PRMT5発現抑制するとシャペロン活性低下による細胞死を誘導した。NDRG2発現正常細胞ではこの現象が出現しないことから、NDRG2発現欠損がん細胞のみで特異的に細胞死させる合成致死性(Synthetic lethality)を発見した。そこで本研究は合成致死性を介したNDRG2欠損がん特異的なPRMT5酵素活性に依存したHSP90を標的とした新規阻害剤の創出を目的とする。
NDRG2発現欠損ATL細胞でPRMT5を標的として阻害をすれば、細胞質のHSP90A活性を特異的に阻害し細胞死を誘導できると考え、市販PRMT5阻害剤を用いてATL細胞株に対する影響を検討した。NDRG2発現欠損ATL細胞やNDRG2発現を低下させたT-ALLで細胞増殖阻害およびクライアントタンパク質分解効果が認められた。NDRG2を過剰発現させたATL細胞ではこれらの効果は見られなかった。しかし、市販PRMT5阻害剤のNDRG2発現欠損ATL細胞と正常細胞との阻害効果の差異が2倍程度と小さく、新規阻害剤開発の必要性に迫られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

市販のPRMT5阻害剤の効果を検討し、NDRG2欠損ATL細胞で有意に細胞増殖抑制やクライアントタンパク質分解が認められた。新規阻害剤開発のために効果的なスクリーニング方法を確立し、検討を行なっている。

今後の研究の推進方策

阻害剤候補のライブラリーを用いてNDRG2発現低下ATLがん細胞での細胞死とHSP90クライアントタンパク質分解を引き起こす化合物(2000~)を検討する。
第一段階 : Controlとして正常T細胞、非ATLのNDRG2発現T細胞急性リンパ性白血病T-ALL細胞株や各臓器正常細胞株、NDRG2欠損がん細胞としてATL患者検体、ATL細胞株や各臓器がん細胞株に候補化合物を10μM添加する。1~3日後、生細胞数測定キットで細胞生存率を評価する。マイクロプレートリーダーで450nm/620nmの吸光を測定し、DMSOのみの吸光度を細胞生存率100%として候補化合物と比較検討する。正常T細胞・NDRG2発現細胞では生存率80%以上、NDRG2欠損ATLがん細胞では生存率40%以下の化合物を候補とする。
第二段階 : クライアントタンパク質分解スクリーニングを行うため高感度タンパク質定量が可能なpBiT3.1発光システム(Luciferase activity)を利用する。クライアントタンパク質として標的遺伝子AKT1-HiBiT融合ベクターを作製し (pBiT3.1-AKT1)、ATLがん細胞に導入する。PRMT5/HSP90阻害効果を有する化合物で細胞を処理すると、未処理導入細胞に対してAKT1-HiBiT融合タンパク質が分解され発光量が減少する。
pBiT3.1-AKT1 plasmidをControl およびATLがん細胞株にtransfectionしたもの、または安定発現株にしたものに、第一段階候補化合物を濃度依存的(0.01~10μM)に添加する。1~3日後にLuminescence値を比較検討し、候補化合物を選別する。

次年度使用額が生じた理由

(理由)概ね計画通りに進み、次年度に研究費を残すため
(使用計画)動物使用および物品費

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Antitumor effects of chloroquine/hydroxychloroquine mediated by inhibition of the NF-κB signaling pathway through abrogation of autophagic p47 degradation in adult T-cell leukemia/lymphoma cells.2021

    • 著者名/発表者名
      Fauzi YR, Nakahata S, Chilmi S, Ichikawa T, Nueangphuet P, Yamaguchi R, Nakamura T, Shimoda K, Morishita K.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 16 ページ: e0256320

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0256320

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Pathophysiological significance of NDRG2 in cancer development through PP2A phosphorylation regulation.2021

    • 著者名/発表者名
      Morishita K, Nakahata S, Ichikawa T.
    • 雑誌名

      Cancer Sci

      巻: 112 ページ: 22-30

    • DOI

      10.1111/cas.14716

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Development of the treatment for adult T cell leukemia/lymphoma (ATL) by highly polymerized proanthocyanidins from blueberry leaves.2021

    • 著者名/発表者名
      Tomonaga Ichikawa
    • 学会等名
      第94回日本生化学会
  • [学会発表] Treatment of ATL via proteasomal degradation of JAK by highly polymerized proanthocyanidins from blueberry leaves.2021

    • 著者名/発表者名
      Tomonaga Ichikawa
    • 学会等名
      第80回日本癌学会
  • [図書] Medical Science Digest2021

    • 著者名/発表者名
      市川朝永、森下和広
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      ニュー・サイエンス社
  • [図書] 月刊「細胞」2021

    • 著者名/発表者名
      市川朝永、森下和広
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      ニュー・サイエンス社

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公開日: 2022-12-28  

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