研究課題
新規がん抑制遺伝子NDRG2発現低下は結合タンパク質群の高リン酸化を引き起こして細胞内情報伝達系の恒常的な活性化および異常を惹起し、がん発症進展に関わっていた。さらに、NDRG2発現低下に伴う高リン酸化PRMT5アルギニンメチル基転移酵素に依存したHSP90Aアルギニンメチル化修飾を見出した。HSP90Aアルギニンメチル化によるシャペロン活性亢進がクライアントタンパク質を安定化させ細胞増殖維持と繋がっていた。PRMT5発現抑制するとシャペロン活性低下による細胞死を誘導した。NDRG2発現正常細胞ではこの現象が出現しないことから、NDRG2発現低下がん細胞のみで特異的に細胞死させる合成致死性(Synthetic lethality)を発見した。そこで本研究は合成致死性を介したNDRG2欠損がん特異的なPRMT5酵素活性に依存したHSP90を標的とした新規阻害剤の創出を目的とする。新規PRMT5阻害剤開発のために、細胞生存率測定(第一スクリーニング)とクライアントタンパク質分解スクリーニングを行うため高感度タンパク質定量が可能なLuciferase発光システム(第二スクリーニング)を確立した。200候補化合物のスクリーニングを行い、第一段階の評価基準に一致した化合物を数種類を発見した。第二段階のPRMT5/HSP90活性評価としてクライアントタンパク質AKT1安定化を検討している。NDRG2欠損がん特異的なPRMT5機能解析の過程でPRMT5と複合体を形成し、酵素活性を増強するMEP50を同定した。MEP50はPRMT5と共に細胞質に局在し、HSP90と複合体を形成していた。NDRG2欠損がんでPRMT5/MEP50複合体が細胞質に偏在し、腫瘍形成に関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
新規阻害剤開発のために効果的なスクリーニング方法を確立し、スクリーニングを開始している。がん細胞でPRMT5に結合する新規因子を同定し、機能解析を行なっている。
大規模に候補化合物(2000~)の第一および第二段階スクリーニングを行い、新規PRMT5阻害剤開発を進めていく。研究の過程で同定したMEP50の機能解析を行い、がん発症機構の解明および治療標的として有用かどうか検討する。
(理由)概ね計画通りに進み、今後の研究である大規模な阻害剤スクリーニングに研究費を残すため。得られた結果を学会や論文で発表するための旅費や投稿費を残すため。(使用計画)薬剤スクリーニング用試薬および物品費の購入、論文投稿費、学会発表旅費
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件)
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