研究課題/領域番号 |
21K07130
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
北嶋 洋志 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90777971)
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研究分担者 |
鈴木 拓 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20381254)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胃がん / lncRNA / ストレス顆粒 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
申請者らは先行実験により、慢性胃炎および胃がんで発現が亢進する長鎖非コードRNA(lncRNA) TM4SF1AS1が、ストレス顆粒の形成促進とアポトーシスの抑制に関与することを明らかにしたが、その詳細なメカニズムはまだ不明である。TM4SF1AS1と相互作用することが示唆されたRACK1は、MTK1とp38/JNKの活性化を介してアポトーシスを引き起こす一方、ストレス顆粒内に隔離されアポトーシスが抑制されることが報告されている。TM4SF1AS1の過剰発現によって形成促進されたストレス顆粒にはRACK1が局在し、TM4SF1AS1のノックダウンはストレス顆粒の減弱とアポトーシスを誘導するため、TM4SF1AS1とRACK1によるアポトーシスへの影響と機能的関連についてダブルノックダウン実験により検証した。その結果、TM4SF1AS1のノックダウンにより誘導されたアポトーシスは、その後のRACK1のノックダウンによって抑制されることが示唆された。またTM4SF1AS1がストレス顆粒形成を促進するメカニズムについて検討した。ストレス顆粒の形成には、翻訳開始因子eIF2αのリン酸化による翻訳開始阻害が大きく関与するが、ウェスタンブロットではTM4SF1AS1の過剰発現やノックダウンはeIF2αのリン酸化に影響しなかった。一方、eIF4F複合体による翻訳開始の阻害がノンカノニカルなストレス顆粒の形成に関与することが報告されており、TM4SF1AS1が4E-BP1のリン酸化に影響を与えるかどうかを検証した。TM4SF1AS1の過剰発現は4E-BP1のリン酸化を抑制し、一方でノックダウンは4E-BP1のリン酸化を亢進することが明らかとなった。以上から、TM4SF1AS1はeIF4F複合体による翻訳開始に影響し、ノンカノニカルなストレス顆粒の形成に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TM4SF1AS1とRACK1のダブルノックダウンを行った結果、TM4SF1AS1が特にRACK1による早期アポトーシスの誘導を抑制することが明らかとなった。ストレス顆粒形成においては、TM4SF1AS1はリン酸化eIF2αによる翻訳開始阻害ではなく、脱リン酸化4E-BP1を介したeIF4F複合体による翻訳開始を阻害し形成されるノンカノニカルなストレス顆粒に関与することが示唆された。また、本研究計画と並行して論文の準備と投稿作業を行なってきた。以上より全体的におおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
がん細胞におけるTM4SF1AS1によるストレス顆粒の機能として、RACK1などのアポトーシスに関連するタンパク質以外にも転写産物を隔離し翻訳を制御することが想定される。先に行ったChIRP RNA-seqにより、TM4SF1AS1と相互作用し関連する可能性のあるRNA分子を同定し、さらにアポトーシスに関連するmRNAがエンリッチすることを確認した。次年度はTM4SF1AS1によって標的とされ翻訳制御を受けるアポトーシス遺伝子の絞り込みを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に併せて行ってきた論文の投稿が本年度内のアクセプトに間に合わなかったため、論文掲載料などに充てる予定であった経費が次年度使用額として生じた。次年度は、論文投稿の際の追加実験で使用する試薬消耗品や投稿時に必要な諸経費に充てる予定である。
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