dropout screening及び、腫瘍形成能が異なる骨肉腫細胞の遺伝子発現プロファイルから抽出された遺伝子に関し、AXT細胞のノックダウン、ノックアウト細胞を作成し、C57BL/6(B6)とC57BL/6 SCID(B6SCID)マウスに移植し、腫瘍形成能の比較を行った。その結果、アクチン結合タンパクとBMPシグナルを抑制する脱リン酸化酵素は、B6マウスとB6SCIDマウスで腫瘍形成能が異なった。これらの分子に関しては、骨肉腫細胞側と免疫細胞側の両方の影響を解析し、関与する分子機構の解明を進めている。また、2022年度抽出されたFgfファミリー遺伝子は、ノックアウト細胞とcontrol細胞との間で施行した網羅的遺伝子発現解析をもとに、腫瘍形成能を抑制する分子機構を解析中である。 Fgfファミリーの関与が示唆されたため、分子標的療法薬を用いて治療効果を検証した。FGFRを阻害するnintedanibは、単剤投与により骨肉腫形成、転移を抑制した。一方、in vitroでの増殖抑制効果は弱く、腫瘍微小環境への影響が示唆された。しかし、nintedanib投与群でも腫瘍へのT細胞浸潤は依然として低く、腫瘍形成の抑制は、B6SCIDマウスとB6とは同程度であり、腫瘍免疫への影響は少なかった。解析の結果、腫瘍形成能の抑制は主に、腫瘍血管形成の抑制によるものであった。nintedanibは、肺線維症へ臨床応用されており、新規骨肉腫治療薬として活用できる可能性がある(海外誌に発表)。 さらに、PD-L1の発現がAXT細胞由来の骨肉腫で確認されたため、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体を用いて効果検討を行った。しかしながら、有意な腫瘍増殖抑制効果はみられず、免疫細胞の疲弊化が明らかとなり、骨肉腫における腫瘍免疫抑制機構の解明が必要である。
|