研究課題/領域番号 |
21K07135
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岡田 斉 近畿大学, 医学部, 教授 (20280620)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 代謝制御 / 発がん |
研究実績の概要 |
BAT3は、ヒト主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域の網羅的シーケンスの過程で、ヒト染色体6番のMHC classⅢ領域に存在するBAT1-BAT5と命名された遺伝子クラスター内に存在する機能不明な遺伝子として同定された(Science 1989, PNAS 1990)。BAT3は細胞質および核内に局在するが、申請者はDNA損傷刺激等により局在が変化することを報告した。これまで、BAT3はアポトーシス制御、TP53の翻訳後修飾、プロテアソーム機能、分子シャペロン、免疫応答制御に関与するという報告がなされている。これらの一連の報告は、BAT3が、癌化を制御する生体内での細胞外微小環境の制御に重要な役割を果たしている可能性を強く示唆している。実際、網羅的ヒトゲノム解析により、BAT3変異が大腸がん、肺がんのリスクファクターとなることが示唆されている。しかしながら、その分子機序についての詳細は不明であり、個体レベルでの解析は報告が無い。 個体レベルでの発がん機序を明らかにする目的で、独自に組織特異的Bat3ノックアウトマウスを樹立した。これまでの予備データに基づき、肝細胞特異的Bat3ノックアウトマウスを作成し、Bat3の欠損が肝がんの発症、進展に与える影響を解析している。これまで、Bat3欠損が肝癌の発症リスクを上昇させること、また、発癌が高脂肪食摂餌により加速されることを見出している。網羅的遺伝子発現解析、生化学的解析によりBat3欠損特異的に影響を受ける新規標的を見出し、新たな解析ツールの開発、表現系解析を継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度のマウスのコロニーの管理、組織特異的ノックアウトマウスを用いたがんモデル作成と表現系解析を継続している。昨年度から進めてきたがん誘導実験が順調に進行し、解析に必要な検体を収集することができた。また、昨年度行った肝がん発症前の網羅的遺伝子発現解析に続き、がん組織において網羅的な遺伝子発現解析結果を得ることが出来、当初予想していた発がん機序に新たな知見を加えることが可能となった。新規発がん機序について、現在、多角的アプローチによる解析を継続中である。また、これらの解析を補完する為の組織解析、生化学的解析も進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
がん組織における網羅的遺伝子発現解析から得られた情報に基づき、新たな遺伝子変異を導入したマウス発癌モデルの作成を行う。網羅的遺伝子発現解析情報から、タンパク質の相互作用の解析を行う予定としている。また、より詳細な組織学的、生化学的解析を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験の効率化により未使用額が発生した。次年度の核酸合成に使用する予定である。
|