研究実績の概要 |
BAT3は、ヒト主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域の網羅的シーケンスの過程で、ヒト染色体6番のMHC classⅢ領域に存在するBAT1-BAT5と命名された遺伝子クラスター内に存在する機能不明な遺伝子として同定された(Science 1989, PNAS 1990)。BAT3は細胞質および核内に局在するが、申請者はDNA損傷刺激等により局在が変化することを報告した。これまで、BAT3はアポトーシス制御、TP53の翻訳後修飾、プロテアソーム機能、分子シャペロン、免疫応答制御に関与するという報告がなされている。これらの一連の報告は、BAT3が、癌化を制御する生体内での細胞外微小環境の制御に重要な役割を果たしている可能性を強く示唆している。実際、網羅的ヒトゲノム解析により、BAT3変異が大腸がん、肺がんのリスクファクターとなることが示唆されている。しかしながら、その分子機序についての詳細は不明であり、個体レベルでの解析は報告が無い。個体レベルでの発がん機序を明らかにする目的で、独自に組織特異的Bat3ノックアウトマウスを樹立した。これまでの予備データに基づき、肝細胞特異的Bat3ノックアウトマウスを作成し、Bat3の欠損が肝がんの発症、進展に与える影響を解析している。これまで、Bat3欠損が肝癌の発症リスクを上昇させること、また、発癌が高脂肪食摂餌により加速されることを見出している。網羅的遺伝子発現解析、生化学的解析によりBat3欠損特異的に影響を受ける新規標的を見出し、新たな解析ツールの開発、表現系解析を行った。同時に国際共同研究にて免疫系制御におけるBAT3の役割を個体レベルで解析した。
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