研究実績の概要 |
転写因子E2F1は、二大がん抑制因子の1つpRBの機能欠損によって活性化されると、もう1つの二大がん抑制因子p53を活性化するARFがん抑制遺伝子を活性化することにより、がん化抑制に重要な役割を果たしている。E2F1のN末端領域が、がん抑制遺伝子の活性化に貢献していることを見出した為、その役割と相互作用因子による活性の制御メカニズムを解析している。 1) がん抑制遺伝子活性化におけるE2F1のN末端領域の役割 E2F1のN末端領域に新たな転写活性化領域が存在し、基本転写因子GTF2H2と相互作用することを見出した為、E2F1による標的遺伝子の活性化におけるGTF2H2の役割を検討している。今年度は、GTF2H2およびGTF2H2に対するshort hairpin RNA(shRNA)を発現する組換えアデノウイルスを作成し、E2F1による内在性遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。その結果、GTF2H2の過剰発現によりE2F1によるがん抑制遺伝子の発現誘導が増強し、逆にノックダウンにより減弱した。以上から、E2F1のN末端領域は、GTF2H2と相互作用することにより、標的遺伝子の活性化に貢献していると考えられた。 2) E2F1と相互作用する因子によるE2F1活性の増強または抑制メカニズム E2F1の転写活性を増強する因子として、転写のコアクチベーターDDX5, WDR1, 基本転写因子GTF2H2を、抑制する因子としてサイクリンD1, 転写因子NF-kB(RelA), WDR77を同定している。そこで、内在性の因子がE2F1による標的遺伝子の活性化の増強または抑制に関与しているか否かをshRNAを用いたノックダウンにより検討している。今年度は、サイクリンD1およびNF-kB(RelA)のノックダウンにより、E2F1による標的遺伝子の活性化が増強することを確認した。
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