研究課題/領域番号 |
21K07152
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
磯部 大地 九州大学, 医学研究院, 助教 (30838727)
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研究分担者 |
菊繁 吉謙 九州大学, 大学病院, 講師 (40619706)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | クローン性造血 / 大腸がん / がん免疫 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
固形がんにおいて加齢に伴うクローン性造血の合併は予後不良因子である。その原因として、クローン性造血に由来した遺伝子変異を有する免疫担当細胞が免疫応答を抑制し、がんの進展に有利ながん微小環境を生み出していると想定される。しかしながら、その機序は未だ明確ではない。本研究では、血中循環白血球とがん浸潤白血球のリンパ球、骨髄球の各画分の遺伝子変異をそれぞれ解析し、クローン性造血とがん微小環境における免疫応答との関連を詳らかにすることを目的としている。 2021年度は15例の大腸がん手術検体から細胞を単離し、蛍光標識した各種抗体(CD3 / CD14 / CD4 / CD8 / CD19 / CD45 / CD56 / CD68 / CD326など)を用いて細胞を標識した。セルソーターにより各白血球画分を分けて回収し、DNAシークエンスのために各画分からDNAの抽出を行なった。回収できる細胞数の少ないCD14陽性細胞などの白血球画分は、DNAの増幅を行なった後にライブラリ調整を行なった。DNA増幅を行うにあたり、事前に至適な増幅条件(試薬、鋳型DNA量、増幅反応時間)についても検討した。ライブラリ調整の終了した検体から適宜DNAシークエンスを行っている。 また、腫瘍組織中に含まれる腫瘍浸潤白血球の各画分(T細胞、B細胞、NK細胞、単球・マクロファージ、顆粒球など)の構成割合は、がん免疫応答に大きく影響すると考えられる。これら構成割合の症例間での違いについても同時に検討を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では2021年度に20例の解析を行うこととしていたが、現在までに〇〇例のサンプルの回収とライブラリ調整が終了しており、進捗状況は概ね順調と考えられる。回収できる細胞数の少ない画分があったことから増幅条件の検討にやや時間を要したが、それも終了し、DNAシークエンスにより遺伝子変異を確認する前段階まで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ライブラリを作成した15例のサンプルをDNAシークエンスし、がん浸潤白血球について、どの割合(CH保有率、変異アレル頻度)で変異を認め、どの細胞画分(T細胞やマクロファージなど)が変異を有するか、どのような遺伝子変異(TET2、DNMT3A、ASXL1など)を有するか、などについて検討する。さらに同じ症例の末梢血でも同様に白血球画分ごとにDNAシークエンスを行い、循環白血球とがん浸潤白血球とを比較する予定である。 DNAシークエンスにより検出された遺伝子変異やその変異を有する白血球分画を同定した後に、その遺伝子変異の意義を明らかにするためにin vitroで機能アッセイを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
回収できる細胞数が準備実験よりも少ない白血球画分があり、DNAシークエンスを行う前に増幅が必要であると判断した。増幅の条件検討のためにやや時間を要したため、2021年度末に行う予定であったDNAシークエンスを2022年度に行うこととしたため、助成金を繰り越すこととした。
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