研究課題
申請者は、最新鋭ライトシート顕微鏡の新規3次元イメージングを用いることで腫瘍内の異質な脈管構造を空間的に解明し、腎がん病態の把握並びに新規治療の開発に繋げることを目標とした。さらに本研究ではこのイメージング技術を応用し、腫瘍微小環境おけるB細胞の集簇を示す、Tertiary Lymphoid Structure (TLS)というリンパ節様構造についても3次元化することも目的とする。TLSは腎がん悪性化と深く関与する。がん免疫療法で先駆的立場の腎がん臨床組織でTLS解析を3次元で行い、腎細胞癌の腫瘍微小環境におけるTLSの役割も意義付けたいと考えた。申請者はまず、ccRCC組織(n=105)を用いてtissue micro arrayを作成し、定量的免疫組織学的解析を行った。CD20+B細胞がクラスター化し、さらにその周囲をCD3+T細胞が囲んでいるものをTLSと定義し、予後との関連を検討した。その結果、TLSの存在は腎癌において予後不良と関連していることが明らかになった。さらにccRCCと膀胱癌のTLSの特徴を比較することで、両がん間の予後への影響、TLSの成熟度と空間分布、TLSを取り巻く免疫環境の相違を明らかにした。さらに、新規3次元イメージングを用いて、ヒト腎がんの腫瘍脈管(血管/リンパ管)の免疫組織学的な可視化もすすめており、現在まで50例程のデータをそろえることができた。これについては解析中であり、今後論文報告を予定している。
2: おおむね順調に進展している
すでに我々は2次元の免疫染色下ではあるが、腎細胞癌における腫瘍免疫について、特にTLSの存在意義を明らかにしたことで、その特異な微小環境の解明の一助となることが出来たと考える。さらに研究の本幹である、新規3次元イメージングについても、既に50例ほどの解析をすすめており、ヒト腎がんの脈管構造の異質性について意義付けることができると考える。
まずは現在すすめている、ヒト腎がん50例ほどを用いて透明化検体の脈管構造解析を行う。さらにすでに我々が2次元で明らかにした、腫瘍免疫環境、特にTLSについて、新規3次元イメージングを用いることで、腫瘍内の異質な構造を空間的に解明し、腎がん病態の把握並びに新規治療の開発に繋げることを目標とする。
まず本年度、2次元の免疫染色法でTLSの解析を行った。本来、3次元イメージングにかかる費用を想定していたため、翌年に繰り越す必要が生じた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal for ImmunoTherapy of Cancer
巻: 10 ページ: 1-12
10.1136/jitc-2021-003883.