• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

ゴルジ体に潜みがんシグナルを発信する変異RTK ~潜伏機構の解明と新阻害法開発~

研究課題

研究課題/領域番号 21K07163
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

小幡 裕希  国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (20609408)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード消化管間質細胞腫 (GIST) / KITチロシンキナーゼ / ゴルジ体 / PKD2 / マスト細胞白血病 (MCL) / 急性骨髄性白血病 (AML) / FLT3チロシンキナーゼ
研究実績の概要

複数種の化合物スクリーニングによって、消化管間質細胞腫 (gastrointestinal stromal tumor: GIST) のKIT変異体のゴルジ領域停留が、protein kinase Dに対するインヒビター (CRT0066101: CRT) で有意に解除されることを見出した。さらに、ノックダウンにより、哺乳細胞で確認されているPKD1-3のうち、PKD2のノックダウンのみが、CRT処理のフェノコピーとなることを明らかにした。即ち、GISTのKIT変異体のゴルジ停留は、PKD2の活性化が原因であることを見出した。ゴルジ領域において、KIT変異体は、PKD2およびエフェクター (PI4KIIIB等) を活性化し、自身を停留させていることを示唆するデータを得た。見出した分子群をインヒビターやノックダウンで機能阻害すると、KIT変異体はゴルジ領域からリリースされ、シグナル発信することができなくなることを示唆するデータを得た。さらに、ゴルジ領域からリリースされたKITは、細胞膜を経由して速やかにリソソーム内腔に移行し、分解されることを明らかにした。マスト細胞白血病 (mast cell leukemia: MCL) や急性骨髄性白血病 (acute myelogenous leukemia: AML) のKIT変異体は、ゴルジ体に停留せず、エンドソーム-リソソーム系に局在するが、それらの細胞では、PKD2とKITの機能的な相互作用および物理的結合は認められなかった。さらに、PKD2の阻害は、AMLのFLT3変異体のゴルジ停留には影響しないことが確認され、即ち、KITとPKD2の機能的相互作用は、GISTに特徴的であることが示唆される。今後、GISTのKITとPKD2の仲介分子の解析およびPKD2エフェクターの結合の詳細を明らかにし、それらがMCL, AMLではKITと相互作用しない理由についての解析に取り組みたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

GISTのKIT変異体のゴルジ停留の原因分子の候補としてPKD2を見出し、機能阻害実験および共免疫沈降実験を実施し、確証的なものとした。さらに、フェノコピー探索により、KITとPKD2の仲介分子, エフェクター分子群も見出しつつある。血液がんのレセプターキナーゼ変異体の局在およびシグナルにPKD2が関与しないことは意外だったが、GIST選択的な分子メカニズムの一つを明らかにできたのは意義深いものであると考えられる。

今後の研究の推進方策

GISTのKIT変異体とPKD2の仲介分子の解析およびPKD2エフェクターの結合の詳細を明らかにする。また、分子標的薬耐性GISTにおける解析を進める。さらに、それらがMCL, AMLでは変異レセプターキナーゼと相互作用しない理由についての解析に取り組みたい。

次年度使用額が生じた理由

化合物スクリーニングを新たにおこなっており、使用する抗体, siRNAは、その結果次第で変化するため、次年度使用額が生じた。スクリーニングの結果を得次第、それらを手配する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Combination of pimitespib (TAS-116) with sunitinib is an effective therapy for imatinib-resistant gastrointestinal stromal tumors.2023

    • 著者名/発表者名
      Teranishi R, Takahashi T, Obata Y, Nishida T, Okubo S, Kazuno H, Saito Y, Serada S, Fujimoto M, Kurokawa Y, Saito T, Yamamoto K, Yamashita K, Tanaka K, Makino T, Nakajima K, Hirota S, Naka T, Eguchi H & Doki Y
    • 雑誌名

      Int. J. Cancer

      巻: 152 ページ: 2580-2593

    • DOI

      10.1002/ijc.34461

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Golgi retention and oncogenic KIT signaling via PLCγ2-PKD2-PI4KIIIβ activation in GIST cells.2022

    • 著者名/発表者名
      Obata Y, Kurokawa K, Tojima T, Natsume M, Shiina I, Takahashi T, Abe R, Nakano A & Nishida T
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2022.12.19.520889

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 消化管間質細胞腫における変異KITチロシンキナーゼのシグナルの場 [ゴルジ領域] への異常局在, その原因マシナリーの同定2022

    • 著者名/発表者名
      小幡裕希, 黒川量雄, 戸島拓郎, 夏目美祐希, 椎名 勇, 高橋 剛, 安部 良, 中野明彦, 西田俊朗
    • 学会等名
      第45回 分子生物学会年会
  • [学会発表] 消化管間質細胞腫および肺腺がんにおける変異チロシンキナーゼの細胞増殖シグナルに対するBFA-like細胞内輸送ブロッカーM-COPAの阻害効果および作用機序研究2022

    • 著者名/発表者名
      夏目美祐希, 丹羽真琳子, 下仲基之, 村田貴嗣, 安部 良, 西田俊朗, 椎名 勇, 小幡裕希
    • 学会等名
      第45回 分子生物学会年会
  • [学会発表] GISTに対する新規HSP90阻害薬TAS-116とマルチチロシンキナーゼの併用効果に関する検討2022

    • 著者名/発表者名
      高橋 剛, 寺西立冴, 小幡裕希, 大久保秀一, 数野裕美, 西田俊朗, 斎藤百合奈, 山下公太郎, 西塔拓郎, 田中晃司, 山本和義, 牧野知紀, 黒川幸典, 中島清一, 江口英利, 土岐祐一郎
    • 学会等名
      第31回 日本がん転移学会学術集会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi