研究実績の概要 |
前年度までの複数種の化合物スクリーニングによって、消化管間質細胞腫 (gastrointestinal stromal tumor: GIST) のKIT変異体のゴルジ領域停留の原因が、膜交通のキー分子protein kinase D2 (PKD2) であることを明らかにした。本年度は、PKD下流とされるPI4-kinase B (PI4KB) およびそのエフェクターであるAP1, GGA1についての役割を解析した。 PI4KBに対するインヒビターIN-10やPIK-93を処理した際や、AP1, GGA1のノックダウンは、PKD2ノックダウンと同様に、KIT変異体をゴルジ領域からリリースさせ、その結果、KITシグナルを抑制した。ゴルジ領域からリリースされたKITは、細胞膜を経由して速やかにリソソーム内腔に移行し、分解されることを明らかにした。マスト細胞白血病 (mast cell leukemia: MCL) や急性骨髄性白血病 (acute myelogenous leukemia: AML) のKIT変異体は、ゴルジ体に停留せず、エンドソーム-リソソーム系に局在するが、それらの細胞では、PKD2-PI4KB-AP1, GGA1とKITの物理的結合は認められなかった。さらに、PKD2-PI4KB-AP1, GGA1の阻害は、AMLのFLT3変異体のゴルジ停留にも影響しないことが確認され、本研究で明らかにした経路は、GISTに特徴的であることが示唆される。現在、介在分子や他エフェクターも明らかになりつつあり、詳細な分子機構の解明が期待される。一方で、他がんの変異チロシンキナーゼの局在異常は、PKD2非依存的であり、個別にメカニズム解析する必要があることが示唆される。
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