研究課題/領域番号 |
21K07165
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
上北 尚正 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (50373402)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 癌転移 / CDCP1 / セリンプロテアーゼ / Src型キナーゼ / シグナル伝達 / 細胞運動能 / 多量体形成 |
研究実績の概要 |
昨年度、臨床的にCDCP1及びMTSP-1の発現が重要である事を証明したため、CDCP1のmRNA発現とセリンプロテアーゼMT-SP1のmRNA発現と生命予後不良との関連が明らかとなった肺癌細胞株を用いて、MT-SP1によるCDCP1切断の有無をウエスタンブロットで確認したところ、CDCP1の切断にMT-SP1が関与する可能性が考えられた。そこで、配列の事なる2種類のMT-SP1 siRNAを用いてMT-SP1の蛋白質発現を抑制すると、CDCP1の切断が抑制されることを発見した。2種類のMT-SP1 siRNAは、それぞれMT-SP1蛋白質の抑制割合が異なっていたが、各々のMT-SP1蛋白質の抑制割合とCDCP1の切断量は相関していた。これら結果から、CDCP1はMT-SP1により切断の制御を受けていることが示唆された。さらに、CDCP1の多量体形成に関するMT-SP1の関与については、標識付のCDCP1変異体を用いた免疫沈降実験から、CDCP1のN末端側220アミノ酸の欠失変異体では、もう一方のCDCP1の結合量が他の変異体に比べて増加している事が明らかとなった。この領域は、CDCP1がMT-SP1で切断されて放出される領域の一部であることから、N末端側の220アミノ酸がCDCP1の多量体形成の結合領域である可能性を見出した。 次に、MT-SP1によるCDCP1の切断が癌細胞の転移機構の制御に関わるかをまず細胞運動能により検証した。結果、MT-SP1 siRNAによるMT-SP1蛋白質の抑制は、癌細胞の細胞運動能を抑制する事が示された。 今後は、MT-SP1によるCDCP1切断を介した細胞運動能がどの様な機構で制御されているのか、これまでに示してきた細胞内シグナル伝達、特にSrc型キナーゼの活性制御等を中心にシグナル伝達機構の解析をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必要な試薬等が入手に出来る様になり、MT-SP1のsiRNAのRNA配列を用いたsiRNAも入手できた。よって、CDCP1切断に対するMt-SP1の機能制御機構の一端を解明で来た。さらに新規にMT-SP1による切断部位を欠失したCDCP1変異体の作成も終了し、免疫沈降実験や細胞への強発現実験も進められている。しかしMT-SP1の変異体に関しては、うまく作成できておらず、その点では遅れが生じている。よって、これらを総合的に評価して「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
MT-SP1によるCDCP1切断を介した癌転移機構を解明するために、以下の研究を推進する。 ①CDCP1切断のない癌細胞にMT-SP1を強発現させ、抗体を用いた免疫沈降とウエスタンブロットにより細胞運動能の検証をおこなう。 ②siRNA法を用いたMT-SP1有無による癌細胞内シグナル伝達の変化をウエスタンブロット等で解析する。 ③細胞外のCUBドメインを用いたカラムを作製しCUBドメインに結合する他のタンパク質の同定をおこない、CDCPとMT-SP1を含むCDCP1細胞外領域を介した複合体について検証を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要とする一部の研究試薬等(siRNA, DNAプライマー, 細胞培養関連試薬等の次年度使用への計画の変更から、次年度使用額が生じた。 今年度にsiRNAやDNAプライマーを用いた各種変異体の細胞発現ベクターの作成および細胞培養試薬等による実験に使用する。
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